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飲食店の電気工事チェックリスト|開業前と既存改装で必要な工事

飲食店の電気工事チェックリスト|開業前と既存改装で必要な工事
※画像はイメージです

飲食店の開業時に必須となる電気工事は、業務用厨房機器の電源確保・看板照明・店内照明・空調・POSシステムなど多岐にわたります。設計を誤ると「ブレーカーが頻繁に落ちる」「冷蔵庫の容量が足りない」「営業中に電源不足で機器停止」といったトラブルに直結し、売上機会の損失につながります。

本記事では飲食店の開業・既存店舗改装で必要となる電気工事について、項目別の費用相場、専用回路の判断基準、業者選定のポイント、開業スケジュールとの整合まで、店舗オーナー・開業準備者向けに体系的に解説します。

飲食店の電気工事の全体像

飲食店の電気工事は、開業形態(新築・居抜き・スケルトン)と店舗規模によって必要工事が変わります。

開業形態 電気工事の規模 費用相場
新築物件 全配線・分電盤・受電設備一式 200〜800万円
スケルトン物件 内装+電気を一から構築 150〜500万円
居抜き物件(改装小) 厨房機器更新、コンセント増設 30〜150万円
居抜き物件(改装大) 厨房レイアウト変更、専用回路再設計 80〜300万円

「居抜き物件は電気工事が安い」と思いがちですが、前店舗の機器構成と異なる場合は専用回路の再設計が必要で、思った以上に費用がかかることがあります。

物件選定時には電気容量・分電盤の状態を必ず確認し、想定外の電気工事費が発生しないようにします。

厨房機器の電源設計

飲食店の電気工事で最も重要なのは厨房機器の電源設計です。業務用厨房機器は消費電力が大きく、専用回路が必須のケースが多くあります。

業務用厨房機器の消費電力

機器 消費電力の目安 電圧 専用回路
業務用冷蔵庫(縦型2扉) 300〜600W 100V 推奨
業務用冷凍庫(縦型2扉) 600〜1,000W 100V 必須
業務用製氷機 500〜1,500W 100V/200V 必須
業務用食器洗浄機 2,000〜5,000W 200V 必須
業務用電子レンジ 1,500W 100V 必須
業務用オーブン 3,000〜10,000W 200V 必須
業務用フライヤー 3,000〜6,000W 200V 必須
業務用炊飯器(5升) 1,500〜2,500W 100V/200V 推奨
エスプレッソマシン(業務用) 3,000〜5,000W 200V 必須
ガス機器の電源(IGBT等) 100〜500W 100V 不要

厨房の電源容量は「個別機器の消費電力合計 × 同時使用率0.7〜0.8」で計算するのが目安です。同時使用率を考慮しないと、実際の運用で容量不足になります。

200V専用回路の重要性

業務用厨房機器の多くは200V電源を必要とします。100Vコンセントしかない物件では、分電盤改修と200V配線の新設が必要です。

  • 200V専用回路新設:1回路あたり3万〜6万円
  • 分電盤改修(200V対応):5万〜15万円
  • 既存100V→200Vへの変更:機器ごと、配線変更必要

居抜き物件で前店舗が100V中心だった場合、200V化のための工事費が思いのほかかかります。物件契約前に、既存の電気設備が想定する厨房機器構成に対応できるか、業者の現地調査で必ず確認します。

専用回路が必要な厨房機器一覧

専用回路(1機器あたり1回路を割り当てる)が必須の厨房機器は以下のとおりです。それぞれ「なぜ専用回路が必要か」も含めて理解しておくと、業者との打ち合わせがスムーズになります。

  1. 業務用冷凍庫:起動時の突入電流が大きく、他機器と共有すると相互停止のリスク。冷凍庫の停止は食材ロスに直結するため最優先。
  2. 業務用食器洗浄機:高負荷で長時間稼働、200V必須。給湯機能を兼ねる機種は更に大電力。
  3. 業務用電子レンジ:1,500W級は専用回路必須。短時間でピーク電力を消費するため共有不可。
  4. 業務用オーブン・フライヤー:3,000W超で200V必須。連続加熱で電力消費が高水準。
  5. 製氷機:起動と停止が頻繁、他機器との干渉を避ける。夜間に大量製氷する機種は特に。
  6. エスプレッソマシン:高出力、起動時電流が大きい。コーヒー専門店では複数台になることも。

これらを既存回路に繋ぐと、ブレーカーが頻繁に落ちて営業に支障が出ます。開業時に専用回路を確保しておくのが鉄則です。

看板・店内照明の電気工事

飲食店の集客に直結するのが看板照明と店内雰囲気の照明設計です。

看板照明

  • LEDサイン(壁面):50,000〜200,000円(サイズによる)
  • LED袖看板(突き出し):100,000〜400,000円
  • 電源工事:屋外コンセント新設で30,000〜80,000円
  • タイマー/光センサー:自動点灯制御で20,000〜50,000円

看板照明は屋外設置のため防水処理(IP44以上)が必須。長期使用での絶縁劣化リスクを考慮し、防水パッキンの定期交換も計画します。

店内照明

  • ダウンライト(LED):1台あたり工事費込み 4,000〜8,000円
  • ペンダントライト:1台あたり 8,000〜20,000円
  • ライティングレール:m単価 5,000〜15,000円
  • 調光システム:機器代込みで 50,000〜200,000円

業態によって必要照度が異なります。

業態 推奨照度
カフェ・落ち着いたバー 100〜200lx
カジュアルレストラン 200〜400lx
ファミレス・ファストフード 400〜700lx
厨房(作業エリア) 500〜750lx

雰囲気作りには「全体的に暗め+スポットで明るく」の対比が効果的です。客席エリアと厨房エリアで照度を切り替える調光システムを導入すると、業態に合わせた演出ができます。

既存店舗改装時の電気工事

既存店舗を改装する際の電気工事は、新規開業より複雑になることが多いです。

改装時の典型的な工事項目

  • 機器入れ替えに伴う専用回路追加
  • レイアウト変更に伴う配線移設
  • 古い分電盤の更新(30A→50Aへの増量)
  • 照明のLED化(雰囲気変更含む)
  • 看板の更新(ロゴ・デザイン変更)

改装時の注意点

  • 既存配線の状態確認:築20年以上の物件は絶縁劣化のリスク
  • 営業しながらの工事:夜間・定休日対応が必須
  • 保健所への変更届:厨房レイアウト変更時には保健所対応必要
  • 消防法対応:席数増加時には誘導灯・消火器の追加検討

改装は「壊して付け直す」だけでなく、法令対応・営業継続を考慮した段取りが必要です。改装期間中の売上ダウンも見込んでおき、運転資金の手当てを含めた計画を立てます。

POSシステム・キャッシュレス決済の電源設計

近年の飲食店ではPOSシステム・タブレット注文・キャッシュレス決済端末・防犯カメラなどIT機器の電源確保も重要です。

IT機器の電源要件

  • POSシステム:100V専用回路推奨
  • タブレット注文(充電含む):客席ごとにコンセント
  • キャッシュレス決済端末:レジ近くにコンセント
  • 防犯カメラ:PoE対応LANで配線統合
  • 無線LAN AP:天井配線でPoE給電

これらは消費電力こそ大きくないですが、業務継続に直結するため停電対策(UPS)を併用するのが安心です。

業者選定の注意点

飲食店の電気工事業者を選ぶ際は、以下を確認します。

  • 飲食店施工実績:5件以上、業態別の経験
  • 厨房機器メーカーとの連携:機器据付業者との連携経験
  • 保健所・消防対応の知識:法令対応の実績
  • 24時間対応:営業中のトラブル対応体制
  • 賠償責任保険:施工中の事故・施工後不具合の備え
  • 現地調査の質:分電盤の容量確認、配線経路の図示

特に「飲食店施工実績」は重要。住宅・オフィス中心の業者だと、業務用機器の電源要件への理解が浅い場合があります。複数の業態(カフェ・居酒屋・レストラン等)を経験している業者の方が、提案の幅が広いです。

開業スケジュールと電気工事のタイミング

飲食店開業の場合、電気工事は内装工事と並行で進めます。一般的な開業スケジュールは以下のとおりです。

時期 電気工事の内容
開業6〜4ヶ月前 物件調査・電気容量確認
開業4〜3ヶ月前 業者選定・見積取得(3社相見積)
開業3〜2ヶ月前 契約・分電盤改修・基幹配線
開業2〜1ヶ月前 厨房機器据付・専用回路接続
開業1ヶ月前 照明・看板設置・通電試験
開業2週間前 試運転・最終調整
開業前日 全機器の動作確認

電気工事は内装工事に組み込まれることが多く、内装業者と電気業者の連携が極めて重要です。日程調整のミスで工事が止まると、開業日が後ろ倒しになります。

まとめ

飲食店の電気工事は、業種特有の機器電源設計と法令対応が必要な領域です。

  • 開業形態(新築・スケルトン・居抜き)で工事費が大きく変わる
  • 厨房機器の専用回路設計が最重要、200V電源も必須
  • 看板照明は防水処理(IP44以上)と自動点灯制御
  • 改装時は既存配線の絶縁劣化、保健所・消防法対応の確認
  • POSシステム・タブレット注文の電源確保もIT化時代に必須
  • 業者選定は飲食店実績5件以上、24時間対応体制を重視
  • 開業スケジュールは電気工事を内装工事と並行設計

開業準備の中でも電気工事は「目に見えない投資」になりがちですが、ここを妥協すると営業中のトラブルで売上機会を失います。物件選定段階から電気容量を確認し、計画的に進めるのが成功への近道です。

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