業者間の中古取引|現状渡し・保証・返品の決め方と民法のルール

業者間の中古取引で「現状渡し」と書いても、それだけで売り手の責任がすべて消えるわけではありません。 民法では、売り手が責任を負わない特約をしても、知りながら告げなかった事実については責任を免れないとされています(民法第572条)。逆に、買い手の側にも、商人どうしの売買なら受け取ったら遅滞なく検査し、不具合を見つけたら直ちに知らせる義務があります(商法第526条)。
つまり、揉めないための取り決めは「現状渡し」の4文字ではなく、何を確認して、何を伝えて、いつまでに言えば対応するかを先に書くことです。この記事では、保証・現状渡し・返品をどう決めるかを、法律の基本と実務の書き方の順に整理します。支払いや送料の決め方は業者間で中古を売買するときで扱っています。
個別の契約の判断は、必要に応じて弁護士などの専門家に確認してください。ここでは考え方を扱います。
民法の基本:契約不適合責任
2020年4月施行の改正民法で、売買の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に整理されました。届いた物が種類・品質・数量について契約の内容に合わないとき、買い手は次を求められます。
| 買い手が求められること | 根拠 |
|---|---|
| 修理・代わりの物・不足分の引渡し(追完) | 民法第562条 |
| 代金の減額 | 民法第563条 |
| 損害賠償・契約の解除 | 民法第564条 |
ここで大事なのは、基準が「契約の内容」だということです。 「中古・使用済み・傷あり」と合意して売った物に傷があっても、それは契約どおりです。中古取引では、状態をどこまで書いたかが、そのまま責任の範囲になります。
期間の決まり
民法では、種類・品質の不適合は、買い手が知った時から1年以内に売り手へ通知しないと、上の請求ができなくなります(民法第566条)。ただし売り手が引渡しの時に不適合を知っていた、または重大な過失で知らなかった場合は別です。
業者どうしの取引では、さらに商法が効きます。
- 受け取ったら遅滞なく検査する(商法第526条第1項)
- 検査で不具合を見つけたら直ちに通知する。直ちに発見できない不具合でも、6か月以内に見つけた場合は同様(同条第2項)
- 売り手が不具合を知っていた場合は、この制限は適用されない(同条第3項)
「届いて半年たってから動かないと言われた」は、商人間ではこの規定に照らして判断されます。 実務では、これより短い確認期間を当事者で決めておくのが一般的です。
現状渡し(責任を負わない特約)の効き方
「現状渡し・返品不可」は、民法上は担保責任を負わない旨の特約にあたります。特約自体は有効ですが、限界があります。
- 知りながら告げなかった事実については責任を免れない(民法第572条)
- 書いてある状態と違う物を渡した場合は、そもそも「現状」の前提が崩れる
現状渡しにするなら、知っている不具合はすべて書いてください。 書いて渡した不具合は、買い手が承知の上で買ったことになります。書かずに渡すと、特約があっても揉めます。
取り決めに書く5項目
| # | 項目 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 1 | 状態の説明 | 使用期間、外した理由、確認した内容、分かっている不具合 |
| 2 | 動作確認の範囲 | 通電のみ確認/負荷試験なし/未確認 |
| 3 | 保証の有無と範囲 | 保証なし(現状渡し)/到着後◯日以内の初期不良のみ対応 |
| 4 | 確認期間と連絡方法 | 到着後◯日以内に、写真を添えてメッセージで連絡 |
| 5 | 対応の内容 | 返品・返金/減額/交換。返送料の負担 |
2番目を具体的に書くと、3番目の保証の範囲が自然に決まります。 「通電のみ確認」と書いた物に、負荷をかけて動かないと言われても、説明の範囲を超えています。
返品の決め方
返品に応じるなら、次を先に決めておきます。
- 対象: 初期不良だけか、思っていたのと違うも含むか
- 期限: 到着後何日以内か(商法の検査義務より短くするのが一般的)
- 状態: 取り付け後は不可、梱包を保つこと、など
- 返送料: 不良なら売り手、買い手の都合なら買い手
- 返金の時期: 返品の到着と確認の後
「取り付けた後は返品不可」は必ず書いてください。 取り付けた機器を外して返す費用は、品物の値段より高くなりがちです。
買い手がやるべきこと
商法の規定があるので、買い手の側にも動くべきことがあります。
- 届いたらすぐ開けて確認する(型番、数量、外観、付属品)
- 不具合を見つけたら、その日のうちに写真付きで連絡する
- 確認期間内に通電・動作確認ができない場合は、その旨を先に伝える
「現場で使うまで開けない」は、業者間の取引では自分に不利に働きます。 使う予定が先なら、届いた時点で外観と型番だけでも確認してください。
揉めたときの順番
- やり取りの記録と、出品時の説明を確認する(何を約束していたか)
- 写真で状態を共有する
- 説明の範囲内か外かを切り分ける
- 範囲外なら、返品・減額・交換のどれで収めるか協議する
感情の前に、出品時の説明文を開いてください。 多くの揉めごとは、説明に書いていない部分で起きています。
よくある質問
Q. 「ノークレーム・ノーリターン」と書けば何も言われないか
特約としては有効ですが、知っていて書かなかった不具合については責任を免れません。知っている不具合は書いてください。
Q. 確認期間はどのくらいが適切か
品目によります。通電で確認できる機器は短く、現場で取り付けないと分からない物は、確認の方法と期間を個別に決めてください。
Q. 個人事業主との取引でも商法は効くか
商法第526条は商人間の売買の規定です。相手が商人に当たるかどうかで変わるため、判断に迷うときは専門家に確認してください。
まとめ
- 中古取引の責任の範囲は、書いた状態の説明で決まる
- 民法では、知った時から1年以内の通知が原則。商人間では受領後に遅滞なく検査し、直ちに通知する(直ちに発見できない不具合は6か月以内)
- 現状渡しは有効だが、知りながら告げなかった事実は免れない
- 状態・確認範囲・保証・確認期間・対応の5項目を先に書く
- 買い手は届いたらすぐ確認し、その日のうちに連絡する
購入前に出品者へ質問できます。GenbaLink 在庫マーケット では、型番や使用状況を確認してから購入の申し込みができます。



