下請法と建設業法はどちらが適用されるか|建設工事が適用除外になる理由

「うちは下請法の対象ですか」という質問はよく出ますが、建設業では答えが分かれます。建設工事の請負は下請法の適用除外である一方、建設業に関わる取引でも下請法が適用されるものがあるためです。この記事では切り分けを整理します。
なお個別の取引がどちらに該当するかは内容によります。判断に迷う場合は専門家にご確認ください。
建設工事の請負は下請法の対象外
下請代金支払遅延等防止法(下請法)の対象となる役務提供委託から、建設業を営む者が業として請け負う建設工事の全部または一部を他の建設業を営む者に請け負わせることが除外されています(下請法2条4項)。
理由は「規制の重複を避けるため」です。 建設業法が下請保護について類似の規制を備えているため、下請法による規制は不要とされています。
つまり、建設工事の請負については建設業法が効くということです。
出典: 下請代金支払遅延等防止法 第2条第4項。
では建設業法は何を定めているか
建設業法には、下請保護に関する規定が並んでいます。
| 内容 | 条文の例 |
|---|---|
| 書面による契約 | 契約内容の書面化と相互交付 |
| 不当に低い請負代金の禁止 | 通常必要と認められる原価に満たない額での契約の禁止 |
| 不当な使用資材等の購入強制の禁止 | |
| 下請代金の支払期日 | 24条の3、24条の6 |
| 検査と引渡し | 完成通知から一定期間内の検査 |
| 一括下請負の禁止 | 丸投げの禁止 |
| 特定建設業者の義務 | 施工体制台帳など |
「下請法の対象外だから何をしてもよい」ではありません。 建設業法が同種の規制をしています。
下請法が適用される取引
一方、建設業に関わる取引でも、建設工事に当たらないものは下請法の対象になりえます。
- 設計業務(建築設計、設備設計)
- 地質調査業務
- 測量業務
- 建設コンサルタント業務
- 建設資材の販売・製造
- ソフトウェアや情報成果物の作成
- その他の役務提供
これらは建設業法でいう建設工事ではないため、下請法による規制を受けます。
切り分けの実務
自社の取引がどちらに当たるかを整理してみてください。
| 取引の例 | どちらが効くか |
|---|---|
| 電気工事を協力業者に請け負わせる | 建設業法 |
| 設備の設計を外注する | 下請法(要件を満たす場合) |
| 現場の測量を依頼する | 下請法(同上) |
| 資材の製造を委託する | 下請法(同上) |
| 施工図の作成を委託する | 内容による |
設計と施工を一体で請け負う場合など、判断が分かれる場面があります。 契約の内容で判断されるため、迷う場合は確認してください。
下請法が適用される場合の要件
下請法は、親事業者と下請事業者の資本金の区分によって適用が決まります。
- 取引の種類(製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供委託)
- 親事業者と下請事業者の資本金額
資本金の区分を満たさなければ、下請法は適用されません。 ただしその場合でも、独占禁止法の優越的地位の濫用の問題は残りえます。
実務で押さえること
- 建設工事の請負は建設業法(書面契約、支払期日、不当に低い代金の禁止)
- 設計・測量・資材などは下請法の可能性がある(資本金区分を確認)
- どちらも適用されない取引でも、独占禁止法の問題は残る
- 書面を残すことはどの場合も必要
「どの法律か」より「書面を残し、条件を明示し、期日を守る」ほうが実務では効きます。 どの法律が適用されても、求められる行動は大きく変わりません。
発注する側の注意
- 口頭発注をしない(どの法律でも書面が求められる)
- 一方的な減額をしない
- やり直しを無償で求めない
- 支払を遅らせない
- 買い叩かない
これらはどの法律の下でも問題になる行為です。 法律の切り分けを気にする前に、この5つを守ってください。
取引の内容で切り分ける
自社の外注を洗い出して、どちらの法律が効くかを整理しておくと判断が早くなります。
| 外注の内容 | 建設工事か | 適用 |
|---|---|---|
| 電気設備工事の施工 | ○ | 建設業法 |
| 空調設備工事の施工 | ○ | 建設業法 |
| 施工図の作成 | 内容による | 要確認 |
| 設備設計 | × | 下請法(要件を満たせば) |
| 現場の測量 | × | 下請法(同上) |
| 盤の製作 | × | 下請法(同上) |
| 資材の運搬 | × | 下請法(同上) |
盤の製作や資材の運搬を外注している会社は多く、これらは建設工事ではありません。 自社の外注の一覧を作って確認してみてください。
どちらでも共通して必要なこと
法律の切り分けに時間をかけるより、次を守るほうが実務では確実です。
- 書面を交わす(発注時)
- 条件を明示する(金額、納期、支払)
- 一方的に変更しない
- 期日どおりに払う
- やり直しを求めるなら理由と費用を整理する
この5つはどの法律の下でも問題になりません。
よくある質問
Q. 建設業だから下請法は関係ないのか A. 建設工事の請負は対象外ですが、設計や測量などは対象になりえます。取引の内容で判断してください。
Q. 下請法の対象外なら支払期日は自由か A. 建設業法に支払期日の定めがあります。関連記事「下請代金の支払期日」を参照してください。
Q. 資本金が小さければ規制はないのか A. 下請法の適用はなくても、建設業法や独占禁止法の問題は残ります。
Q. 判断に迷う取引がある A. 契約の内容で判断されます。所管の窓口または専門家に確認してください。
まとめ
建設工事の請負は下請法の適用除外で、建設業法が下請保護の規制を担っています。理由は規制の重複を避けるためです。一方、設計・地質調査・測量・建設コンサルタント・資材の製造販売などは建設工事に当たらないため、要件を満たせば下請法の対象になります。どちらが適用される場合でも、書面を残す、条件を明示する、期日を守る、一方的に減額しない、やり直しを無償で求めないという行動は共通です。
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