収集運搬と積替保管|自社で運ぶときの線引きと、経由地の扱い

「自社の現場で出た廃棄物を、自社のトラックで処理場まで運ぶ」。よくある形ですが、これに許可が要るのか要らないのかで迷う方が多くいます。さらに「一度自社のヤードに寄せてから運ぶ」となると話が変わります。この記事ではその線引きを整理します。
なお個別の該当性は工事の内容と運搬の形態で変わります。判断に迷う場合は所管の窓口に確認してください。
自社運搬には許可が要らない
排出事業者が自ら、自社の産業廃棄物を運搬する場合、収集運搬業の許可は不要です。 業として他人の廃棄物を運ぶわけではないためです。
ただし「許可が不要」と「何も要らない」は違います。次が求められます。
- 運搬基準を守る(飛散・流出しない、悪臭が漏れない)
- 車両に表示をする(産業廃棄物運搬車である旨、氏名または名称、許可がない旨など)
- 書面を携行する(廃棄物の種類、数量、積載日、運搬先など)
- 他人の廃棄物を混載しない
2番目と3番目を知らずに運んでいる会社が実際にあります。 表示は決められた大きさの文字で行う必要があります。
建設工事では「誰が排出事業者か」が先
建設工事から生じる廃棄物は、元請業者が排出事業者です(廃棄物処理法第21条の3)。
したがって、
- 元請が自社の車両で運ぶ → 自社運搬にあたる
- 下請が自分の車両で運ぶ → 原則として「他人の廃棄物の運搬」になり、収集運搬業の許可が必要
「うちが出したごみだから自分で運べる」は、下請の立場では成立しません。 ここが建設業に固有の落とし穴です。
法第21条の3第3項には例外規定があり、一定の条件をすべて満たす場合に下請負人が運搬できる場合があります。条件は複数あるため、該当するかは個別に確認してください。
積替保管とは
収集運搬の途中で、一度別の場所に降ろして積み替えたり保管したりすることを積替保管といいます。
- 小さい車両で集めて、大型車にまとめて運ぶ
- 一定量たまるまで保管してから運ぶ
- 別の現場の分と合わせて運ぶ
積替保管を行うには、収集運搬業の許可に「積替保管を含む」ことが必要です。 許可証で確認できます。
自社ヤードに寄せる場合
「現場から自社の資材置場に運び、たまってから処理場へ持っていく」という運用は、積替保管に該当する可能性があります。
- 自社運搬であっても、保管の基準を満たす必要がある
- 保管場所の要件(囲い、掲示板、飛散・流出の防止など)
- 保管量と保管期間の制限
「自社の敷地だから自由に置ける」ではありません。 現場での一時保管については関連記事「現場での一時保管」で扱っています。
判断に迷う運用は、事前に所管の窓口へ確認してください。 後から指摘を受けると、遡って是正するのが難しい分野です。
有価物なら扱いが変わる
運ぶものが有価物であれば、廃棄物処理法上の収集運搬の規制の対象ではありません。
- 金属スクラップを買取業者へ持ち込む
- 中古機器を引き渡す
ただし有価物にあたるかどうかの判断が前提です。判断基準は関連記事「余剰資材を売ると廃棄物ではなくなるのか」で整理しています。
「有価物のつもりで運んでいたが実は廃棄物だった」が最も risk の高い状態です。
混載の注意
- 他人の廃棄物と混載しない(自社運搬の要件)
- 品目を混ぜない(混合になり単価が上がる)
- 特別な扱いが必要なものを混ぜない(水銀使用製品、石綿含有など)
「近くの現場のついでに」が最も起きやすい違反です。 別の元請の現場の廃棄物を積むと、自社運搬ではなくなります。
車両と書面の準備
自社運搬を行うなら、次を準備してください。
- 車両の表示(マグネットシートやステッカー。大きさの規定がある)
- 携行する書面の様式(種類、数量、積載日、運搬先、連絡先など)
- 運転者への周知(表示と書面の意味を理解しているか)
- 記録の保存
表示は運搬のたびに付ける必要があります。 常時表示か、着脱式かは運用で決めてください。
車両表示の実務
自社運搬の表示は、決められた事項を決められた大きさで示す必要があります。
- 産業廃棄物運搬車である旨
- 氏名または名称
- 許可を受けていない者である旨(自社運搬の場合)
マグネットシートで着脱式にするのが一般的です。 常時付けておくと、廃棄物を積んでいない日も表示していることになります。
あわせて、運転者が書面を携行しているかを出発前に確認する運用にしてください。書面には廃棄物の種類、数量、積載した日、運搬先の名称と所在地、連絡先などを記載します。
表示も書面も、指摘を受けてから作るのでは遅いものです。自社運搬を始める前に用意してください。
自社運搬と委託の線引き
同じ「運ぶ」でも、誰の廃棄物を運ぶかで必要なものが変わります。
| 場面 | 収集運搬業の許可 | 必要になるもの |
|---|---|---|
| 自社が出した廃棄物を自社で運ぶ | 不要 | 車両の表示、書面の携行 |
| 他社が出した廃棄物を運ぶ | 必要 | 積む側・降ろす側の両方の自治体の許可 |
| 積替保管を伴う運搬 | 必要(積替保管を含む許可) | 保管場所の基準、掲示 |
| 元請が下請の出した廃棄物を運ぶ | 原則として必要 | 例外の要件を個別に確認 |
2行目の「両方の自治体」を落とす例が多くあります。 県をまたぐ運搬では、積む側の県と降ろす側の県の両方で許可が要ります。委託先の許可証を見るときは、この2つが揃っているかを確認してください。
よくある質問
Q. 自社運搬でもマニフェストは要るか A. 自ら処分する場合を除き、処分を委託するならマニフェストは必要です。運搬を自社で行っても処分は委託であるためです。
Q. 元請から「持ち帰って処分して」と言われた A. 建設工事の廃棄物は元請が排出事業者です。下請が持ち帰って処分する運用は原則できません。元請に確認してください。
Q. 積替保管の許可を取るべきか A. 継続的に自社ヤードで積み替える運用をするなら検討の余地があります。ただし施設の要件があるため、所管窓口に相談してください。
Q. 有価物と廃棄物を同じ車で運んでよいか A. 分けて積み、それぞれの扱いを明確にしてください。混ざると全体の扱いが不明確になります。
Q. 表示のシートはどこで用意するか A. 市販のマグネットシートがあります。記載事項と大きさの規定に合うものを選んでください。
Q. 軽トラックでも表示は必要か A. 車両の大きさにかかわらず必要です。
まとめ
排出事業者が自社の廃棄物を自ら運ぶ場合、収集運搬業の許可は不要ですが、運搬基準・車両の表示・書面の携行・他人の廃棄物を混載しないことが求められます。建設工事では元請が排出事業者となるため、下請が自分の車両で運ぶと原則として許可が必要になります。自社ヤードに一度寄せる運用は積替保管に該当する可能性があるため、事前に所管窓口へ確認してください。有価物であれば規制の対象外ですが、その判断が前提になります。
運ぶ前に、そもそも売れるものが混ざっていないか確認してください。GenbaLink 在庫マーケット で建設業者どうしの直接売買に出せます。
委託先の確認は産廃業者の許可をどう確認するか、現場に置く場合は現場での一時保管をご覧ください。




