追加工事の合意と精算|口頭指示を残す仕組みと、断るときの伝え方

工事の途中で「ついでにこれもお願い」と言われる。建設現場では日常的に起きることですが、これが精算の段階で最も揉めます。「聞いていない」「無償のつもりだった」という食い違いは、記録がないことから生じます。この記事では、追加を書面に残す仕組みと、金額の決め方を整理します。
揉める理由は3つ
| 理由 | 中身 |
|---|---|
| 誰が指示したか不明 | 現場の担当者か、発注者か、他職種か |
| 有償か無償かが不明 | 「サービスで」と思っていた/いなかった |
| 金額の合意がない | やってから金額を出すと交渉になる |
3番目が最も多く、そして最も避けやすいところです。 着手前に金額を出せば、多くは解決します。
追加が発生する場面
- 図面と現場が違った
- 発注者の要望が変わった
- 他職種との取り合いで手戻りが出た
- 想定外の状況が出てきた(既設の状態、地中障害)
- 工程の変更で手間が増えた
「誰の都合で発生したか」が費用負担の判断に関わります。 記録するときは、原因も一緒に残してください。
書面に残す仕組み
凝った様式は要りません。1枚の用紙で回ります。
- 日付
- 指示した人の氏名と所属
- 指示の内容(何をどこまで)
- 発生の原因(図面相違、要望変更、など)
- 概算の金額または「別途見積」
- 工期への影響
- 受けた側の署名
「指示書」「変更連絡票」など名前は何でも構いません。 現場に用紙を置いて、追加が出たらその場で書く運用にしてください。
写真とメッセージも証拠になる
書面が難しい場面もあります。その場合は次で代替できます。
- その場でメッセージを送る(「先ほどのご指示、◯◯という理解でよろしいですか」)
- 写真を撮る(施工前の状態、指示された箇所)
- 日報に書く(日付と内容)
メッセージで確認を取る形が最も手軽で、かつ有効です。 相手が「はい」と返せば、それが記録になります。
金額の決め方
追加の金額は、次のいずれかで決めます。
| 方法 | 向いている場面 |
|---|---|
| 当初契約の単価を適用 | 数量が増えただけの場合 |
| 別途見積 | 内容が変わる場合 |
| 実費精算(人工+材料) | 数量が読めない場合 |
| 協議による | 判断が分かれる場合 |
実費精算にするなら、単価と算定方法を先に決めてください。 「実費で」とだけ言って進めると、後で単価の交渉になります。
着手前に確認する3点
- 有償か無償か(曖昧なら「見積を出します」と言う)
- 誰の承認が要るか(現場担当の権限を超えていないか)
- 工期への影響(延びるなら先に伝える)
2番目が重要です。 現場の担当者が指示したものの、発注者側の決裁を経ていない場合、後で「その追加は聞いていない」となります。金額が大きい追加は、書面での承認を求めてください。
受けられないときの伝え方
すべての追加を受ける必要はありません。断り方に工夫が要ります。
- 「今の体制では工期に影響が出ます。◯日いただければ対応できます」(条件を示す)
- 「別途お見積りしてよろしいですか」(有償であることを示す)
- 「本工事の範囲外なので、追加としてお受けします」(範囲を確認する)
「できません」だけでは関係が悪くなります。 どうなら受けられるかを示してください。
変更契約にする
金額が大きい追加や、工期が変わる追加は、変更契約または変更注文書にしてください。
- 当初契約の内容を変更する形で書面を作る
- 金額、工期、内容を明記する
- 双方が署名または記名押印する
日々の小さな追加は指示書で、まとまったら変更契約で。 この2段構えが実務的です。
元請の立場から
発注する側にとっても、追加の管理は自分を守ります。
- 追加を口頭で出すと、後で金額を争うことになる
- 発注者からの追加が下請へ伝わる過程で内容が変わる
- 追加分を発注者に請求できなければ、自社の負担になる
発注者から追加の承認を得てから下請へ流すのが原則です。順序が逆になると、承認が下りなかった場合に自社が被ります。
現場に用紙を置く
追加が出た瞬間に書けるようにしておくと、記録が残ります。
- 複写式の用紙を現場事務所に置く(1枚を相手に渡す)
- 項目を印刷しておく(日付、指示者、内容、原因、金額、工期)
- 朝礼の場所の近くに置く
- 書いたらその場で双方が確認する
「後で書く」は書かれません。 その場で書ける状態を作ってください。
精算の場面で使う
集めた記録は、精算のときに順番に並べます。
- 日付順に並べる
- 原因別に分類する(図面相違、要望変更、他職種、想定外)
- 金額を集計する
- 当初契約の範囲との関係を整理する
- 相手に提示して協議する
原因別に分類すると、負担の判断がしやすくなります。 図面相違なら発注者側、自社の段取り不足なら自社、という整理ができます。
よくある質問
Q. 小さい追加まで書面にするのは大変では A. メッセージ1通で足ります。書面の様式にこだわらず、記録が残ればよいと考えてください。
Q. 「サービスで」と言われた場合は A. それも記録してください。無償であることを双方が認識していれば、後で問題になりません。
Q. すでに着手してしまった追加の精算は A. 内容と経緯を整理して、根拠を示して協議してください。写真と日報が材料になります。
Q. 発注者と現場担当で言うことが違う A. 誰の指示で進めるかを確認してください。権限の所在を最初に整理しておくと防げます。
まとめ
追加工事で揉める理由は、誰が指示したか、有償か無償か、金額の合意があるかの3つです。着手前に金額を出せば大半は解決します。記録は専用の様式でなくてもよく、その場でメッセージを送って確認を取る形が最も手軽で有効です。金額の決め方(当初単価、別途見積、実費精算)を先に決め、金額が大きいものは変更契約にしてください。断るときは「どうなら受けられるか」を示すことが関係を保ちます。
条件を明示して協力業者を募集すれば、追加の扱いも最初から共有できます。GenbaLink 協力業者募集掲示板 をご利用ください。




