電子マニフェストは使うべきか|義務の範囲と、紙から移るときの実務

産業廃棄物のマニフェストには紙と電子の2種類があります。「義務化された」という話を聞いて自社も対象かと不安になる方がいますが、義務の範囲は限定的です。一方で、義務でなくても任意で使う利点があります。この記事では義務の範囲を確認したうえで、導入の判断材料を整理します。
なお制度の細部は改正されることがあります。実際の適用は所管の窓口および情報処理センターの案内で確認してください。
義務の範囲は限定的
2020年4月1日から、電子マニフェストの使用が一部義務化されました。対象は次のとおりです。
前々年度の特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の発生量が年間50トン以上の事業場を設置している排出事業者が、その事業場から生じる特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)の処理を委託する場合。
出典: 環境省の案内および各自治体の公表資料。判定は「前々年度」の実績で行う点に注意してください。
建設業の多くはこの要件に該当しません。 特別管理産業廃棄物を年間50トン以上出す事業場は限られるためです。したがって、多くの会社にとって電子マニフェストは任意の選択になります。
紙と電子の違い
| 観点 | 紙マニフェスト | 電子マニフェスト |
|---|---|---|
| 交付 | 現場で複写伝票に記入 | 事前または後日にシステムで登録 |
| 返送の確認 | 郵送されてくる票を照合 | システム上で状態が分かる |
| 保存 | 写しを5年間自社で保管 | 情報処理センターが保管 |
| 紛失 | ありうる | データなので紛失しない |
| 集計 | 手作業 | システムで集計できる |
| 費用 | 伝票の購入費 | 利用料 |
| 相手の対応 | 不要 | 処理業者も加入している必要がある |
最後の行が導入の前提条件です。 委託先が電子マニフェストに対応していないと使えません。
電子にする利点
- 返送の確認が楽(紙は返ってこない票を追いかける手間がある)
- 保存の手間がない(センターが保管する)
- 紛失しない
- 集計ができる(何をどれだけ出したかが数字で出る)
- 報告書の作成が楽(多量排出事業者の報告など)
「返ってこない票を追いかける手間」が最も大きい違いです。 紙では、処分が終わったことを示す票が返ってこないと確認できず、期限管理が必要になります。
電子にする課題
- 委託先が対応していないと使えない
- 登録の期限がある(引き渡し後の一定期間内に登録する必要がある)
- 現場で完結しない(その場で紙を切る運用と違い、システムへの入力が要る)
- 利用料がかかる
- 紙と電子が混在する期間の管理が煩雑
3番目が現場では最も効きます。 紙なら現場で書いて渡して終わりですが、電子は誰かがシステムに登録する必要があります。その担当を決めていないと、登録漏れが起きます。
導入するときに決めること
- 誰が登録するか(現場代理人か、事務か)
- いつ登録するか(引き渡し当日か、翌営業日か)
- 登録内容を誰が確認するか
- 返送の確認を誰がいつ見るか
- 紙と併用する期間の管理方法
- 委託先ごとの対応状況の一覧
1番目と4番目を決めないまま導入すると、紙より管理が悪化します。 システムに入っていること自体は誰も見ないためです。
段階的に移る方法
いきなり全部を電子にする必要はありません。
- 委託先で対応しているところから始める
- 量の多い品目から移す(集計の利点が出やすい)
- 紙が残る委託先は一覧で管理する
- 年1回、電子化率を確認する
混在期間は必ず発生します。 混在していることを前提に、どちらの方式かが分かる一覧を持っておいてください。
集計を使い倒す
電子にした最大の利点は、数字が出ることです。
- 品目別の排出量
- 現場別の排出量
- 委託先別の量と単価
- 時期による変動
「どの現場でどの品目が多く出ているか」が分かると、分別の打ち手が決まります。 処分費の削減はここから始まります。
紙のまま運用するなら決めること
電子にしない場合でも、紙の運用を整理しておくと管理が楽になります。
- 交付した票の控えを現場ごとにまとめる
- 返送されてくる票の期限を管理する(一定期間内に返ってこない場合は確認が要る)
- 照合の担当を決める(交付した票と返送分を突き合わせる)
- 保存の場所を1か所にする(現場に散らばると探せない)
- 年1回、未返送のものがないか確認する
2番目が最も抜けます。 返ってこない票に気づかないまま時間が経つと、処理が適正に行われたかを確認できません。「返送待ちの一覧」を持つだけで、紙の運用は大きく改善します。
よくある質問
Q. 自社は義務の対象か A. 前々年度に特別管理産業廃棄物(PCB廃棄物を除く)を年間50トン以上出した事業場があるかで判定します。多くの建設業者は対象外です。
Q. 義務でないなら紙のままでよいか A. 問題ありません。ただし返送の確認と保存の手間は続きます。
Q. 委託先が対応していない場合は A. その委託先とは紙で運用します。混在することは問題ありません。
Q. 登録が遅れた場合はどうなるか A. 登録の期限が定められています。遅れないよう運用を決めてください。
Q. 途中から電子に切り替えられるか A. できます。委託先が対応していれば、契約や運用を整えたうえで切り替えられます。混在期間が発生する点だけ管理してください。
Q. 現場でスマートフォンから登録できるか A. 対応する仕組みがあります。誰がいつ登録するかの運用を決めたうえで、現場で完結させる形も取れます。
まとめ
電子マニフェストの義務は、前々年度に特別管理産業廃棄物を年間50トン以上出した事業場に限られ、多くの建設業者は対象外です。任意で使う利点は、返送の確認が楽になること、保存の手間がないこと、そして排出量が数字で集計できることです。導入の前提は委託先が対応していることで、誰がいつ登録し誰が確認するかを決めないと紙より管理が悪化します。混在期間は必ず発生するので、方式が分かる一覧を持ってください。
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委託の前提となる書面は産業廃棄物の委託契約書、自社で運ぶ場合は収集運搬と積替保管をご覧ください。




