産業廃棄物の委託契約書|雛形をそのまま使うと危ないところ

産業廃棄物の処理を委託するとき、書面での契約が必要です。多くの会社が雛形を使いますが、雛形は「型」であって「自社の内容」ではありません。埋めるべき欄が空のまま運用されていたり、許可の範囲と契約の内容が食い違っていたりすることがあります。この記事では、雛形をそのまま使うと危ないところを整理します。
なお契約書の様式や記載事項の細部は法令と自治体の運用によります。個別の内容は所管の窓口または専門家に確認してください。
原則は「書面」「事前」「二者間」
3つの原則があります。
- 書面で結ぶ(口頭や発注書だけでは足りない)
- 処理を始める前に結ぶ(後から遡って結ぶことはできない)
- 排出事業者と処理業者の二者間で結ぶ(間に別の会社を挟まない)
3番目が実務で最も誤解されます。 元請が下請に「処分も含めて」と発注しても、それは廃棄物の委託契約にはなりません。排出事業者が処理業者と直接結ぶ必要があります。
収集運搬と処分は別に結ぶ
1社が両方の許可を持っていれば1通にまとめられることがありますが、別の会社に頼むなら別々に契約します。
- 収集運搬業者との契約
- 処分業者との契約
「運んでもらっているだけだから契約は不要」ということはありません。 運搬も委託です。
雛形で空欄のまま残りやすい項目
| 項目 | よくある抜け |
|---|---|
| 廃棄物の種類 | 「産業廃棄物」とだけ書かれ、品目が特定されていない |
| 数量 | 予定数量が空欄 |
| 単価と料金 | 「別途」のまま |
| 運搬先の所在地 | 積替保管を経由する場合の記載漏れ |
| 処分の方法と施設 | 施設名と所在地が不明確 |
| 最終処分の場所 | 中間処理後の行き先が書かれていない |
| 契約期間 | 自動更新の条件が曖昧 |
| 適正処理に必要な情報 | 性状、荷姿、混合の有無 |
「廃棄物の種類」を具体的に書くことが最も重要です。 水銀使用製品産業廃棄物や石綿含有廃棄物など、特別な扱いが必要なものはその旨を明記する必要があります。
許可証を必ず確認する
契約の前に、相手の許可証の写しを受け取って確認します。
- 許可の種類(収集運搬か、処分か)
- 許可の品目(委託したい廃棄物が含まれているか)
- 有効期限(切れていないか)
- 許可を出した自治体(運搬は積む場所と降ろす場所の両方の許可が要る)
- 積替保管の有無(許可の内容に含まれているか)
4番目が見落とされます。 収集運搬は、積む地域と降ろす地域それぞれの許可が必要です。県をまたぐ運搬では両方を確認してください。
許可の確認方法は関連記事「産廃業者の許可を確認する方法」で扱っています。
契約書に添付するもの
- 許可証の写し(収集運搬、処分それぞれ)
- 処分先の施設の情報
- 必要に応じて、廃棄物の性状に関する情報
許可が更新されたら、新しい写しを受け取って差し替えてください。 契約は続いていても、許可が切れていれば委託できません。
保存
契約書は保存義務があります。契約終了後も一定期間保存する必要があるため、マニフェストとあわせて保管の仕組みを作ってください。
- 委託先ごとにファイルする
- 許可証の有効期限を一覧で管理する
- 更新時期の前に確認する
許可証の期限を一覧で持っている会社は多くありません。 期限切れに気づかず委託を続けるのが、この分野で最も多い不備です。
建設工事での注意
建設工事から生じる廃棄物は、元請業者が排出事業者となります(廃棄物処理法第21条の3)。
- 契約は元請が処理業者と結ぶ
- 下請が独自に委託契約を結ぶことはできない
- 例外規定はあるが、条件を満たす必要がある
「下請が持ち帰って処分する」という運用は、原則として成立しません。 詳しくは関連記事「余剰資材を売ると廃棄物ではなくなるのか」で扱っています。
見直しのタイミング
- 許可の更新時(写しの差し替え)
- 品目が増えたとき(契約に含まれているか確認)
- 処分先が変わったとき
- 単価改定のとき
- 年1回の棚卸し(全委託先の許可期限を確認)
現場ごとの契約か、包括の契約か
委託契約の結び方には2通りあります。
- 現場ごとに結ぶ: 工事ごとの数量と期間を明記できる。件数が多いと手間
- 包括的に結ぶ: 一定期間の取引をまとめる。数量は予定として記載
継続的に同じ業者へ委託するなら、期間で結ぶほうが実務的です。 ただし品目が増えたときに契約の範囲外にならないよう、扱う品目を広めに記載しておくか、追加のたびに確認する運用にしてください。
いずれの場合も、処理を始める前に有効な契約があることが要件です。「先に運んでもらって契約書は後日」は成立しません。急ぎの現場でこれが起きやすいので、新しい業者を使うときは着手前の確認を習慣にしてください。
よくある質問
Q. 少量でも契約書は必要か A. 必要です。数量にかかわらず、委託するなら書面契約が要ります。
Q. 電子契約でもよいか A. 電子的な方法が認められる場合があります。所管の窓口で確認してください。
Q. 有価物として売却する場合も契約が要るか A. 廃棄物の委託ではないため、産業廃棄物の委託契約の対象ではありません。ただし有価物にあたるかどうかの判断が前提になります。
Q. 契約書の保存はどのくらいか A. 保存期間が定められています。マニフェストとあわせて管理してください。
Q. 契約書の様式はどこで手に入るか A. 業界団体が雛形を頒布しています。ただし雛形は型なので、自社の内容を埋めたうえで、抜けている欄がないか確認してください。
Q. 委託先が契約書を出してこない A. 排出事業者の責任で結ぶものです。相手任せにせず、こちらから求めてください。
まとめ
産業廃棄物の委託契約は、書面で、処理を始める前に、排出事業者と処理業者の二者間で結びます。収集運搬と処分は別の契約です。雛形をそのまま使うと、廃棄物の種類、最終処分の場所、積替保管の記載が空欄のまま運用されがちです。許可証は品目・有効期限・自治体・積替保管の有無まで確認し、更新のたびに差し替えてください。建設工事では元請が排出事業者となるため、下請が独自に委託契約を結ぶことは原則できません。
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相手の許可の確認は産廃業者の許可をどう確認するか、伝票の運用は電子マニフェストは使うべきかで扱っています。




