建設業許可の取得要件|4つの要件と、つまずくのはどこか

500万円以上の工事を請けるなら建設業許可が要る、という話は聞いていても、いざ取ろうとすると「何を用意すればいいのか」で止まります。要件そのものより、それを書類で証明できるかでつまずくためです。
制度は改正が続いています。個別の判断は許可行政庁(都道府県または国土交通省の地方整備局)や行政書士にご確認ください。ここでは全体像と、実務で落ちる場所を扱います。
満たすべき4つの要件
- 常勤役員等(経営業務の管理責任者)がいること
- 営業所技術者等がいること(令和6年12月の改正前は「専任技術者」)
- 財産的基礎があること
- 誠実性があり、欠格要件に該当しないこと
これに加えて、社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)に適正に加入していることが求められます。未加入のままでは許可が下りません。
常勤役員等の要件
経営の経験を持つ人が常勤でいることを求める要件です。代表的なルートは次のとおりです。
- 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験がある
- 建設業に関し5年以上、これに準ずる地位で経営業務を管理した経験がある
- 6年以上、経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験がある
- 建設業で2年以上の役員経験があり、財務・労務・業務運営を担当する者を置く組織体制がある
最後のルートは令和2年の改正で追加されたもので、個人の経験だけに頼らない形が認められるようになりました。
いずれも「常勤」が絶対条件です。 他社の常勤役員を兼ねている、住所が遠すぎて通勤できない、といった状態は認められません。
営業所技術者等の要件
営業所ごとに、技術的な判断ができる人を常勤で置く要件です。一般建設業では次のいずれかです。
- 該当業種の国家資格(施工管理技士、電気工事士など)を持っている
- 指定学科を卒業し、実務経験がある(大学卒3年、高校卒5年)
- 実務経験が10年以上ある
特定建設業ではより厳しく、原則として1級の資格等が必要になります。
この要件が最も多くの会社を止めます。 資格がなく実務経験10年で証明する場合、当時の契約書や注文書、請求書を10年分そろえる必要があり、書類が残っていないと積み上がりません。
財産的基礎の要件
| 区分 | 求められるもの |
|---|---|
| 一般建設業 | 自己資本500万円以上/500万円以上の資金調達能力/直前5年間許可を受けて継続営業した実績、のいずれか |
| 特定建設業 | 欠損の額が資本金の20%以内・流動比率75%以上・資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上(すべて) |
一般は「500万円の残高証明でも可」とされることが多く、ここでつまずく会社は多くありません。特定は4つすべてを満たす必要があり、決算の内容そのものが問われます。
一般と特定はどちらを取るか
下請に出す金額で決まります。発注者から直接請け負った工事について、下請代金の総額が5,000万円以上(建築一式工事は8,000万円以上)になる場合は、特定建設業許可が必要です。(令和7年2月1日施行の政令改正後の金額)
自社で施工する分にはこの区分は関係ありません。「大きい工事だから特定」ではなく「大きく下請に出すから特定」です。
申請の前に3つを決める
要件の確認より先に、申請の枠組みを決めてください。ここが定まらないと書類が作れません。
- 知事許可か大臣許可か(営業所が1つの都道府県に収まるなら知事許可)
- 一般か特定か(下請に出す総額で決まる)
- どの業種を取るか(実際に請ける工事に対応する業種)
1番目は「工事をする場所」ではなく「営業所の場所」で決まります。 県外の現場に出ていても、営業所が一つの県内にあるなら知事許可です。ここを取り違えて大臣許可の準備を始めてしまう例があります。
3番目は欲張らないでください。業種が増えるほど技術者の要件も増えます。
証明資料は先に集める
要件を満たしているかの検討と並行して、資料の有無を確認してください。資料がなければ要件を満たしていても申請できません。
- 常勤役員等の経験を示すもの(過去の登記事項証明書、当時の工事の契約書)
- 営業所技術者等の資格証、または実務経験の期間を示す契約書・注文書・請求書
- 常勤性を示すもの(健康保険証、住民票、賃金台帳)
- 財産的基礎を示すもの(残高証明書、直近の決算書)
- 社会保険の加入を示すもの
過去の勤務先に証明を依頼する必要がある場合は、最も時間がかかります。 先方の担当者が変わっていることも多いため、早めに動いてください。
よくある質問
Q. 500万円未満の工事しかしないなら許可は不要か
軽微な建設工事のみであれば許可がなくても請け負えます。ただし、元請から「許可がないと発注できない」と言われる場面は増えています。取引の入口としての意味が大きくなっています。
Q. 個人事業主でも取れるか
取れます。要件は法人と同じ考え方で、本人が常勤役員等と営業所技術者等を兼ねることもできます。
Q. 実務経験の証明はどうするか
在籍していた会社の証明が基本です。会社が廃業している、証明をもらえない場合は、当時の契約書や請求書などの客観的な資料で補うことになります。取れるうちに取っておくのが確実です。
取ったあとに何が変わるか
許可は手続きの終わりではなく、取引の入口です。取得後に実際に変わるのは次の点です。
- 500万円以上の工事を請け負える(建築一式は1,500万円以上、または木造住宅で延べ面積150平方メートル以上)
- 元請の取引先審査を通りやすくなる
- 建設業許可票の掲示義務が生じる
- 決算変更届など、毎年の届出が発生する
- 経営事項審査を受ければ公共工事の道が開く
負担も同時に増えます。 届出を怠れば指導の対象になり、更新を忘れれば失効します。取得を目的にせず、取ったあとの運用まで含めて社内の担当を決めてください。
まとめ
- 要件は4つ+社会保険。落ちるのは要件そのものより証明資料
- 実務経験10年で技術者要件を満たす場合、書類の収集が最大の山
- 一般か特定かは「下請に出す総額が5,000万円(建築一式8,000万円)以上か」で決まる
- 特定は決算の中身(資本金・自己資本・流動比率・欠損)が問われる
許可を取ったあとの現場と協力業者の探し方は、協力業者の探し方もあわせてご覧ください。




