作業員名簿の書き方|義務化された経緯と、社会保険欄の埋め方

作業員名簿は昔から現場で使われてきた書類ですが、令和2年10月1日施行の建設業法施行規則の改正で、施工体制台帳の添付書類として義務化されました。それまでの「任意の様式」ではありません。
様式は元請の指定や利用する電子サービスによって異なります。ここでは共通する記載事項と、埋めるのに詰まる箇所を扱います。
何のための書類か
義務化の背景には、技能者の社会保険加入の把握と処遇の改善があります。単なる出入りの記録ではありません。
- 誰が現場に入っているかを把握する
- 社会保険に加入しているかを確認する
- 建設業退職金共済などの加入状況を把握する
- 保有資格を確認する(有資格者でないとできない作業がある)
- 緊急時の連絡先を持つ
社会保険の欄が制度の中心です。 ここを空欄で出すと差し戻されます。
記載する事項
- 氏名、生年月日、年齢
- 職種
- 経験年数
- 社会保険の加入状況(健康保険、年金保険、雇用保険)
- 建設業退職金共済または中小企業退職金共済の加入状況
- 保有資格(免許、技能講習、特別教育)
- 雇入年月日、雇入時教育の実施日
- 血液型、緊急連絡先
- 安全衛生に関する教育・健康診断の状況
6番目と7番目は安全管理の側面から求められます。 資格が必要な作業に無資格者を入れていないかの確認に使われます。
社会保険欄の埋め方
最も詰まるのがここです。書き方の考え方は次のとおりです。
| 立場 | 健康保険 | 年金保険 | 雇用保険 |
|---|---|---|---|
| 法人の社員 | 健康保険(協会けんぽ・組合) | 厚生年金 | 加入 |
| 個人事業所の従業員(5人未満等) | 国民健康保険(建設国保を含む) | 国民年金 | 加入 |
| 一人親方 | 国民健康保険(建設国保を含む) | 国民年金 | 対象外 |
| 事業主本人 | 立場による | 立場による | 対象外 |
「適用除外」と「未加入」は別物です。 一人親方の雇用保険は対象外であり、未加入ではありません。ここを取り違えると、加入指導の対象として扱われてしまいます。
保険番号の一部を記載する運用がありますが、個人情報の取り扱いには注意してください。 元請の指定に従い、必要以上の情報を書かないようにします。
一人親方の扱い
一人親方は労働者ではないため、記載の考え方が変わります。
- 雇用保険は対象外
- 労災保険は特別加入していなければ補償がない
- 建退共の加入状況も確認される
- 請負としての契約が実態と合っているかが見られる
労災の特別加入をしていない一人親方を現場に入れる元請は減っています。 加入証明の提出を求められることが一般的になっています。
更新のタイミング
名簿は現場の実態と一致している必要があります。
- 新しい作業員が入るとき(入場前に追加する)
- 作業員が抜けるとき
- 資格を取得したとき
- 保険の加入状況が変わったとき
- 元請から更新を求められたとき
1番目が最も崩れます。 急な応援で当日に人が増えると、名簿にない人が現場にいる状態になります。応援を頼むときの手順に「名簿の追加」を入れてください。
保存
施工体制台帳の添付書類として、台帳と同じ期間の保存が必要です。工事目的物の引渡しから5年間(新築住宅は10年間)が目安になります。
個人情報を含む書類のため、保管の方法も決めてください。 施錠できる場所か、アクセス制限をかけた電子的な保管が望ましい形です。
資格の有効期限を持つ
名簿に書く資格には、期限があるものと無いものが混在します。
- 技能講習の修了証(原則として期限はないが、様式の確認が必要)
- 特別教育の記録
- 免許・資格者証(更新が必要なものがある)
- 健康診断の実施日(定期のもの)
- 雇入時教育の実施日
健康診断の実施日が古いまま提出され、差し戻される例が多くあります。 作業員ごとに「次はいつ受けるか」を持っておいてください。
元データを1つ持つ
現場ごとに名簿を作り直すのではなく、社内に元となる一覧を持ちます。
- 氏名、生年月日、職種、経験年数
- 保険の加入状況
- 保有資格と取得日
- 健康診断の実施日
- 緊急連絡先
この一覧があれば、現場ごとの名簿は抜き出すだけで作れます。 更新も1か所で済みます。人数が多い会社ほど効果が出ます。
よくある質問
Q. 現場に入らない事務職員も載せるのか
現場で作業に従事する人が対象です。事務所勤務で現場に立ち入らない人は通常含めません。
Q. 外国人技能者はどう書くか
在留資格や就労の可否の確認が別途必要です。名簿の様式に欄がある場合は記載します。元請の指示を確認してください。
Q. 手書きでもよいか
差し支えありませんが、更新の頻度を考えると電子で持つほうが実務的です。同じ人が複数の現場に入る場合、データを流用できます。
Q. 名簿の様式は元請ごとに違うのか
指定の様式を使う現場が多くあります。記載事項はおおむね共通しているため、元データを持っていれば様式が違っても転記で対応できます。
Q. 派遣の作業員はどう扱うか
建設業務への労働者派遣は原則として禁止されています。応援や常用の形が実態として派遣に当たらないか、契約の内容を確認してください。
Q. 同じ人が複数の現場に入る場合は
現場ごとに名簿へ記載します。元データを持っていれば、抜き出して使い回せます。
Q. 経験年数はどう数えるか
その職種での経験の年数を記載します。厳密な証明を求められるものではありませんが、実態と大きく異なる記載は避けてください。
Q. 社会保険の番号まで書く必要があるか
様式や元請の運用によります。個人情報にあたるため、求められていない情報は書かないでください。
Q. 短期間だけ入る応援の作業員も載せるのか
現場に入る以上は載せます。1日だけの応援でも、入場前に追加してください。
まとめ
- 令和2年10月から施工体制台帳の添付書類として義務。任意の様式ではない
- 中心は社会保険の加入状況。空欄では通らない
- 一人親方の雇用保険は「適用除外」であって未加入ではない
- 入場前に追加する。急な応援で崩れやすい
安全書類全体の電子化は安全書類とグリーンサイトで扱っています。




