建設業の資材棚卸|何を数えるか、どこまでやるかの線引き

「倉庫に何があるか分からない」という状態は、建設業では珍しくありません。棚卸をしようとしても、資材の種類が多すぎて挫折します。この記事では、続けられる棚卸の作り方を整理します。全部を数えることが目的ではありません。
全部を数えようとしない
棚卸が続かない最大の理由は、対象を絞っていないことです。まず対象を分けてください。
| 分類 | 棚卸の対象か |
|---|---|
| 単価が高く、繰り返し使う資材 | 対象(ここだけで大半の金額を押さえられる) |
| 単価は低いが大量に使う消耗品 | 概数でよい |
| 特定の現場のために買った残り | 対象(次に使えるかの判断が要る) |
| 何年も動いていないもの | 対象(処分か売却の判断が要る) |
| 汎用の小物(ビス、テープ等) | 対象外でよい |
金額の大半は少数の品目が占めます。 すべてを数えるより、上位の品目を正確に押さえるほうが実用的です。
数える単位を決める
現場と倉庫で単位が違うと、数えても合いません。
- 長さもの(配管、電線、鋼材): 長さごとの本数
- 面もの(ボード、コンパネ、断熱材): サイズごとの枚数
- 箱もの(器具、部材): 未開封の箱数と、開封済みの端数
- 機器: 台数と型番
「電線が3箱」では使えるか分かりません。 サイズと残量が要ります。
頻度をどう決めるか
- 年1回: 最低限。決算期に合わせると経理と噛み合う
- 半年ごと: 動きの多い会社
- 随時: 現場の閉じるたびに残材を登録する
「年1回の全体棚卸」+「現場ごとの残材登録」の組み合わせが現実的です。 現場が終わるたびに残材を記録すれば、年1回の棚卸が確認作業で済みます。
記録の最小単位
凝った仕組みは続きません。最低限これだけで回ります。
- 品目名(社内で通じる名前)
- 規格・サイズ
- 数量
- 置き場所
- 入れた日
- 由来(どの現場の残りか)
4番目と5番目が特に効きます。 場所が分からないと使われず、日付が分からないと処分の判断がつきません。
表計算1枚で十分です。共有できる場所に置いて、発注担当が見る運用にしてください。
棚卸の進め方
- 置き場を掃除する(見えない在庫は数えられない)
- 品目ごとに集める(散らばっていると重複して数える)
- 数えて記録する
- 使えないものを分ける(劣化、規格違い、破損)
- 使わないものを分ける(規格は生きているが自社では使わない)
- 記録を共有する
4番目と5番目を分けることが重要です。 「使えない」は処分、「使わない」は売却の候補になります。
出てくる3種類の在庫
棚卸をすると、必ず次の3つが出てきます。
| 種類 | 判断 |
|---|---|
| 使う在庫 | 場所を決めて記録し、発注前に見る運用にする |
| 使わないが使える在庫 | 売却の候補。規格が特定できれば動く |
| 使えない在庫 | 処分。ただし金属なら有価になる |
2番目が最も多く、そして最も放置されます。 「いつか使うかも」で置かれ続け、数年後に劣化して処分になります。
死蔵在庫の判断
「何年動いていないか」で線を引くと判断が早くなります。
- 1年動いていない: 要注意。次の現場で使う見込みを確認
- 2年動いていない: 売却または処分の判断
- 3年以上: ほぼ確実に使われない
入れた日を記録していれば、この判断が一瞬でできます。 記録がないと毎回悩むことになります。
棚卸の効果を出す
数えて終わりでは意味がありません。次につなげてください。
- 発注前に在庫を見る運用にする(これが最大の効果)
- 重複して買っている品目を洗い出す
- 置き場を品目ごとに固定する
- 売却するものを決めて実行する
- 次回の棚卸日を決める
1番目が実行されないと、棚卸は作業で終わります。 発注のフローに「在庫確認」を1ステップ入れてください。
現場からの引き上げを仕組みにする
倉庫の在庫が増える原因の多くは、現場から戻ってこないことではなく、戻ってきたものが記録されないことです。
- 竣工時の引き上げリストに資材を入れる(仮設材だけでなく余った材料も)
- 戻した人が記録する(品目、規格、数量、由来の現場)
- 置き場に入れる前に記録する(先に置くと忘れる)
- 記録は表計算1行でよい
3番目が要点です。 「あとで記録する」は記録されません。置き場の入口に記録用のタブレットか紙を置いておくだけで定着率が変わります。
現場ごとの残材が記録されていれば、年1回の棚卸は「合っているかの確認」で済みます。
よくある質問
Q. 棚卸にどのくらい時間がかかるか A. 対象を絞れば半日から1日です。全部を数えようとすると数日かかり、続きません。
Q. 現場に散らばっている資材はどうするか A. 現場が閉じるときに引き上げるのが基本です。引き上げリストに資材を入れてください。
Q. 誰がやるべきか A. 倉庫の管理者と、発注担当が一緒に行うと効果が出ます。使う側が現物を見ることに意味があります。
Q. システムを入れるべきか A. まず表計算で回してから検討してください。運用が定着していない状態でシステムを入れても使われません。
Q. 現場に置きっぱなしの資材はどう扱うか A. 現場の在庫として記録するか、倉庫へ戻すかを決めてください。どちらでもない状態が最も失われやすくなります。
Q. 棚卸の結果を経理と共有すべきか A. 金額の大きい資材は共有する価値があります。決算期に合わせると二度手間になりません。
まとめ
資材の棚卸は、全部を数えようとすると続きません。単価が高く繰り返し使う資材と、現場の残材、そして長く動いていないものに絞ってください。記録は品目・規格・数量・置き場所・入れた日・由来の6項目で足ります。棚卸で出てくるのは「使う」「使わないが使える」「使えない」の3種類で、2番目が最も多く放置されます。入れた日を記録していれば、何年動いていないかで判断が一瞬でできます。最大の効果は、発注前に在庫を見る運用が回ることです。
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