余剰資材の会計処理|評価損・廃棄損と棚卸資産の扱い

期末に残った余剰資材は、法人税の上では棚卸資産として扱われます。値下がりしたからといって、帳簿の金額を自由に下げて損金にすることはできません。評価損を計上できるのは、災害による著しい損傷、著しい陳腐化、それに準ずる特別の事実(破損・型崩れ・たなざらし・品質変化などで通常の方法では売れなくなったこと)があるときに限られます(法人税法第33条第2項、同施行令第68条第1項第1号、法人税基本通達9-1-4・9-1-5)。単に物価の変動や建値の変更で時価が下がっただけでは認められません(同通達9-1-6)。
一方、実際に廃棄した資材は、その帳簿価額を損失として処理するのが一般的で、売却した資材は売却額と帳簿価額の差が損益になります。この記事では、余剰資材を「持ち続ける・評価を下げる・捨てる・売る」のそれぞれで、経理の扱いがどう変わるかを整理します。
具体的な処理は、会社の状況によって変わります。最終的な判断は顧問の税理士に確認してください。 ここでは、現場と経理が話をするための考え方を扱います。
4つの選択肢と経理の扱い
| 選択肢 | 経理の扱いの考え方 | 押さえる点 |
|---|---|---|
| 持ち続ける | 期末の棚卸資産として評価する | 評価方法は届け出た方法による |
| 評価を下げる(評価損) | 一定の事実があるときに限り損金になる | 値下がりだけでは不可 |
| 捨てる(廃棄) | 帳簿価額を損失として処理するのが一般的 | 廃棄した事実の証拠を残す |
| 売る | 売却額と帳簿価額の差が損益になる | 取引の記録を残す |
現場の判断(使う・使わない・捨てる・売る)が、そのまま経理の処理を決めます。 だからこそ、現場の棚卸と経理の帳簿を一致させておくことが出発点です。棚卸の進め方は建設業の資材棚卸のやり方で扱っています。
持ち続ける場合
期末に残っている資材は、棚卸資産として評価します。評価の方法(原価法の各方式や低価法)は、税務署に届け出た方法によります。届け出ていない法人は、最終仕入原価法による原価法で評価することになります(法人税法施行令第31条)。
「使うかどうか分からない」資材を持ち続けると、その分が資産として残り続けます。 帳簿上の資産が実態より大きく見えるうえ、倉庫の場所も取ります。
評価損を計上できる場合
法人税法では、資産の評価換えで帳簿価額を下げても、原則として損金になりません(第33条第1項)。例外として、棚卸資産について次の事実があり、損金経理で帳簿価額を減額した場合に損金に算入できます(同条第2項、施行令第68条第1項第1号)。
| 事実 | 国税庁の通達での例示 |
|---|---|
| 災害による著しい損傷 | 災害で傷んで価値が下がった |
| 著しい陳腐化 | 型式・性能・品質が著しく異なる新製品の発売により、通常の方法で販売できなくなった(9-1-4) |
| それに準ずる特別の事実 | 破損、型崩れ、たなざらし、品質変化などで通常の方法で販売できなくなった(9-1-5) |
資材に当てはめると、雨ざらしで錆びた、規格の変更で現場で使えなくなった、などが検討の対象になります。 ただし該当するかどうかは事実関係によるので、写真や記録を残したうえで税理士に相談してください。
認められない場合
時価が物価変動、過剰生産、建値の変更などで下がっただけでは、評価損の計上はできません(法人税基本通達9-1-6)。銅や鋼材の相場が下がったという理由だけで評価を下げることはできない、ということです。
廃棄する場合
使えない資材を廃棄処分したときは、その帳簿価額を損失として処理するのが一般的です。このとき大事なのは、廃棄した事実を後から示せることです。
- 廃棄した品目・数量・日付の記録
- 産業廃棄物として委託したなら、委託契約書とマニフェストの写し
- 廃棄前の状態の写真
マニフェストは廃棄物の処理の記録であると同時に、廃棄した事実の証拠にもなります。 委託契約の要点は産業廃棄物の委託契約書で扱っています。
注意:処分費を払って廃棄するより、売れる物は売るほうが、処分費も損失も小さくなります。 廃棄を決める前に、売却の可能性を確認してください。
売却する場合
余剰資材を他社に売ったときは、売却額と帳簿価額の差が損益になります。
- 請求書・領収書などの取引の記録を残す
- 売却額の根拠を説明できるようにする(極端に安い価格は理由を記録する)
- 消費税の扱いを確認する(課税取引になる)
金額を決めるときの考え方は余剰資材・中古機器の値段の決め方で扱っています。 売れずに処分費を払うより、低い価格でも売るほうが得になることがあります。
現場と経理の連携
余剰資材の処理で手間がかかるのは、現場の判断が経理に伝わらないことです。
- 期末前に現場の棚卸を行う(品目・規格・数量・状態)
- 使えない物・使わない物を区分する
- 使えない物は、写真と理由を記録する(評価損や廃棄の根拠になる)
- 売る物は期末までに売るか、売却予定として経理に伝える
- 経理と税理士で、評価損・廃棄損の扱いを確認する
3番目の写真と理由の記録が、後から一番効きます。 期末を過ぎてから状態を説明しようとしても、根拠が残っていないことが多いためです。
よくある質問
Q. 相場が下がった鋼材の評価を下げてよいか
建値の変更や物価の変動で時価が下がっただけでは、評価損は計上できません(法人税基本通達9-1-6)。
Q. 廃棄した資材は全額損失になるか
一般的には帳簿価額を損失として処理しますが、具体的な処理は税理士に確認してください。廃棄の記録を残すことが前提です。
Q. 社内の別現場に回した資材はどう扱うか
社内の振り替えであり、売却ではありません。原価をどの現場に付けるかの社内ルールを決めてください。
まとめ
- 期末の余剰資材は棚卸資産として評価する。評価方法は届け出た方法、未届なら最終仕入原価法
- 評価損は、災害による著しい損傷、著しい陳腐化、破損・品質変化など準ずる事実があるときに限られる
- 物価変動・建値の変更による値下がりだけでは評価損は計上できない
- 廃棄は記録とマニフェストで事実を示す。売却は取引の記録を残す
- 最終判断は顧問の税理士に確認する
使わない資材は、期末前に売ると処分費も損失も抑えられます。GenbaLink 在庫マーケット で規格と数量を示して出品できます。



