建設業の人手不足対策|採用の前に打てる手を並べる

人手不足の話は、たいてい採用の話になります。しかし採用は最も時間がかかり、最も不確実な手です。先に打てる手が4方向あります。
4つの方向
| 方向 | 何をするか | 効果が出るまで |
|---|---|---|
| 仕事を選ぶ | 受注の選別、断る基準を作る | すぐ |
| 外に出す | 外注、協力業者の拡充 | 数週間〜数か月 |
| 生産性を上げる | 段取り、道具、工法、書類の効率化 | 数か月 |
| 辞めさせない | 定着率の向上 | 数か月〜年単位 |
| (採用する) | 求人、育成 | 半年〜年単位 |
上から順に効果が早く出ます。 採用だけを議論している会社は、上の3つを飛ばしています。
仕事を選ぶ
最も即効性があります。ただし勇気が要ります。
- 利益率の低い工事を洗い出す(過去の実績から)
- 移動時間が長い現場の実態を見る
- 支払条件の悪い取引先を把握する
- 手戻りの多い元請を把握する
- 断る基準を決める(距離、金額、条件)
4番目が見落とされます。 図面が固まらないまま着工する、指示が二転三転する元請の現場は、同じ人工で半分の成果しか出ません。金額だけでは見えない損失です。
受注を選別すると売上は落ちますが、利益は落ちないことがよくあります。 まず数字で確認してください。
外に出す
自社でやらなくてよい作業を切り出します。
- 施工の一部を協力業者へ
- 積算・拾い出しの外注
- 書類作成の効率化・外注(安全書類、施工体制関係)
- 運搬・搬入の専門業者化
- 現場写真の整理
3番目の負担は想像以上に大きくなっています。 施工体制台帳、作業員名簿、CCUS の入力といった事務が、現場監督の時間を奪っています。ここを切り出すと、監督が持てる現場数が増えます。
生産性を上げる
- 段取りの前倒し(材料の先行手配、加工の外注)
- 工具・機械への投資(電動工具、測定器、加工機)
- プレファブ化・ユニット化
- 写真・図面の共有をアプリ化する
- 移動の削減(現場の地理的なまとまりを意識した受注)
最後の項目は効きます。 1日に2現場を回ると移動だけで1〜2時間が消えます。受注のエリアを絞ると、同じ人数で回せる現場が増えます。
辞めさせない
採用よりも定着のほうが安く済みます。
- 支払と休日を守る(当たり前のことが最大の要因)
- 資格取得の支援(費用、学習時間)
- 評価と昇給の基準を示す
- 道具と装備を会社が用意する
- 現場の環境(トイレ、休憩、空調服など)
- CCUSで経験を形にする(レベルが上がる)
6番目は若手に効きます。 経験が記録として残り、レベルが上がる仕組みは、キャリアが見える形になります。
協力業者の拡充を先に
自社の人を増やすより、出せる先を増やすほうが早い場合が多くあります。
- 同業からの紹介
- 業界団体・組合
- 行政の公開している名簿(登録・指定の制度がある職種)
- 商社・問屋からの紹介
- マッチングの仕組み
閑散期に開拓してください。 忙しくなってから探しても、相手も忙しくなっています。
数字で現状を把握する
対策の前に、今どうなっているかを数字にしてください。
| 見る数字 | 何が分かるか |
|---|---|
| 1人あたりの年間売上・粗利 | 生産性の水準 |
| 現場あたりの投入人工 | 見積との差 |
| 外注比率 | 自社施工と外注の配分 |
| 監督1人あたりの現場数 | 管理の限界 |
| 離職率と勤続年数 | 定着の状態 |
| 残業時間 | 逼迫の度合い |
4番目が限界を超えていると、どれだけ職人を確保しても現場が回りません。 人手不足の正体が、職人ではなく監督の不足であることは珍しくありません。
断る基準を文章にする
受注を選別すると決めたら、基準を書いてください。口頭の方針は営業段階で崩れます。
- 対応するエリア(片道何分まで)
- 最低の受注金額
- 支払条件の下限(サイト、手形の可否)
- 図面が固まっていない案件の扱い
- 例外を認める場合の決裁者
5番目を決めておくと、基準が形骸化しません。 例外を認めること自体は問題ではなく、誰が判断するかを決めていないことが問題です。
よくある質問
Q. 外国人材の受け入れはどうか
制度が複数あり、受け入れには要件と手続きがあります。住居や教育の体制を含めた準備が必要なため、短期の解決策にはなりません。
Q. 単価を上げれば人は集まるか
一定の効果はありますが、単価だけで動く人は単価で離れます。支払の確実さ、現場の環境、仕事の安定が合わさって初めて定着します。
Q. 受注を断ると次から声がかからないのでは
理由を伝えて断れば、関係は続きます。引き受けて工期を守れないほうが失うものは大きくなります。
Q. 何から手を付けるべきか
まず「仕事を選ぶ」です。数字を出すだけで着手できます。
Q. 若手が定着しない原因は何が多いか
給与よりも、休日と将来の見通しが理由に挙がることが多くあります。評価と昇給の基準を示すだけでも変わります。
Q. 受注を減らすと会社の評判が落ちないか
工期を守れずに迷惑をかけるほうが評判を落とします。断る理由を丁寧に伝えれば、次の機会につながります。
Q. 外注を増やすと利益は減るのか
外注費は増えますが、固定費は増えません。稼働の変動が大きい会社では、外注の比率を上げるほうが利益が安定することがあります。
Q. 生産性を上げる投資は何から始めるか
移動と段取りの削減から始めるのが効果的です。道具の更新より、受注エリアの整理のほうが効くことがあります。
Q. 教育の時間が取れない
繁忙期に教育はできません。閑散期に計画として組み込んでください。資格の受験時期から逆算すると予定が立ちます。
まとめ
- 打ち手は仕事を選ぶ/外に出す/生産性/定着/採用の5方向
- 採用は最も遅く、最も不確実。先に上の4つを見る
- 受注の選別は即効性がある。利益率と手戻りの多い元請を数字で見る
- 書類事務の切り出しは監督の持てる現場数を増やす
- 協力業者の開拓は閑散期にやる
協力業者との関係づくりは繁忙期に優先してもらう関係で扱っています。




