石綿(アスベスト)の事前調査|義務の範囲・有資格者・報告

建築物や工作物を解体・改修するときは、規模にかかわらず、着工前に石綿(アスベスト)が使われているかの事前調査が必要です(石綿障害予防規則第3条、大気汚染防止法第18条の15)。調査は解体・改修する部分のすべての材料について、設計図書などの書面と目視で行い、建築物の調査は令和5年10月1日以降に着工する工事から、厚生労働大臣が定める資格を持つ人に行わせる必要があります。さらに一定規模以上の工事は、結果を電子システムで労働基準監督署と自治体に報告しなければなりません。
この記事では、事前調査の義務の範囲・資格・報告・記録を、撤去で出る廃材の扱いにつながる形で整理します。ダクト・保温材の撤去での具体的な段取りはダクト・保温材の撤去と処分で扱っています。
制度の詳細は改正されることがあります。着工前に厚生労働省の「石綿総合情報ポータルサイト」で最新の情報を確認してください。
誰の義務か
事前調査には、2つの法律が関わります。
| 法律 | 義務を負う人 | 目的 |
|---|---|---|
| 石綿障害予防規則(労働安全衛生法に基づく) | 解体・改修の作業を行う事業者 | 作業する労働者の健康障害の防止 |
| 大気汚染防止法 | 解体等工事の元請業者(発注者から直接請け負った者) | 周辺への石綿の飛散の防止 |
大気汚染防止法では、元請業者は調査の結果を発注者に書面で説明しなければならず、発注者には調査に要する費用を適正に負担するなどして協力することが求められています(同法第18条の15第1項・第2項)。
「小さな改修だから調査は要らない」は誤りです。 調査そのものは規模にかかわらず必要で、規模で変わるのは次に述べる報告の要否です。
調査のやり方
石綿障害予防規則では、調査は解体・改修する部分の全ての材料について、次の方法で行うとされています(第3条第2項)。
- 設計図書などの書面で確認する(書面がなければ省略できる)
- 目視で確認する(構造上、目視が難しい材料は除く)
それでも石綿の有無が明らかにならないときは、分析による調査を行うか、石綿が使われているものとみなして対策を取ります(同条第5項)。
なお、新築工事の着工日が平成18年9月1日以降であることを設計図書などで確認できる建築物・工作物は、その確認によって調査とすることができます(同条第3項第3号。一部の設備は別の日付)。
調査を行う人の資格
| 対象 | 資格が必要になった時期 | 主な資格 |
|---|---|---|
| 建築物 | 令和5年10月1日以降に着工する工事から | 建築物石綿含有建材調査者講習の修了者など |
| 工作物(厚生労働大臣が定めるもの) | 令和8年1月1日以降に着工する工事から | 工作物石綿事前調査者講習の修了者など |
協力会社に撤去を出すときも、調査が有資格者によって行われたかを確認してください。 資格者が行ったことを証明する書類の写しは、記録と一緒に保存する対象です(同規則第3条第7項第11号)。
報告が必要な工事
次の工事は、事前調査の結果をあらかじめ電子システム(石綿事前調査結果報告システム)で報告する必要があります(同規則第4条の2)。報告の義務は令和4年4月1日から始まっています。
| 工事 | 報告が必要になる規模 |
|---|---|
| 建築物の解体工事 | 解体する部分の床面積の合計が80平方メートル以上 |
| 建築物の改修工事 | 請負代金の額が100万円以上 |
| 工作物(厚生労働大臣が定めるもの)の解体・改修工事 | 請負代金の額が100万円以上 |
ポイントは2つあります。
- 工事を2つ以上の契約に分けて請け負う場合は、1つの契約とみなして判断する(同条第4項)
- 工事の一部を下請に出している場合は、最も先次の注文者(元請)がまとめて報告する(同条第5項)
契約を分けて100万円未満にしても、報告の義務は外れません。
記録と掲示
事前調査を行ったら、次が必要です(同規則第3条第7項・第8項)。
- 記録を作成し、調査を終えた日から3年間保存する
- 作業場の見やすい場所に、調査を終えた日と調査結果の概要を掲示する
- 石綿を含む材料の作業を行う作業場には、記録の写しを備え付ける
記録には、調査した部分、調査の方法、材料ごとの石綿の有無と「なし」と判断した根拠、調査した人の氏名などを書きます。
撤去で出る廃材の扱いへのつながり
事前調査の結果は、撤去した材料を売れるか、どう処分するかを決める前提になります。
| 調査結果 | 撤去後の扱い |
|---|---|
| 石綿なし(根拠を記録) | 材料ごとに分別し、金属は売却、その他は通常の産業廃棄物として委託 |
| 石綿あり・みなし | 石綿含有廃棄物として、許可のある業者に分けて委託。他の廃材と混ぜない |
石綿の有無が確定していない材料を、中古品や金属くずとして売ってはいけません。 断熱材・保温材・石膏ボードなど、調査の対象になりやすい材料の処分は断熱材の処分、石膏ボードの処分でも扱っています。撤去の見積もりで処分費を積む考え方は撤去工事の見積で処分費をどう積むかを参照してください。
着工前のチェックリスト
- 解体・改修する部分の全ての材料を調査の対象にした
- 建築物は有資格者が調査した(令和5年10月以降着工)。工作物も対象なら有資格者が調査した(令和8年1月以降着工)
- 報告の対象かを判断した(床面積80平方メートル、請負代金100万円。分割契約は合算)
- 元請が電子システムで報告した
- 発注者に書面で説明した
- 記録を作り、3年保存の段取りをした。現場に掲示した
よくある質問
Q. 小さな改修でも調査は必要か
必要です。規模で変わるのは報告の要否で、調査そのものは規模にかかわらず行います。
Q. 下請が撤去するとき、報告は誰がするか
工事の一部を請け負わせている場合、最も先次の注文者がまとめて報告します。
Q. 調査の費用は誰が負担するか
大気汚染防止法は、発注者に調査費用の適正な負担などによる協力を求めています。見積もりに調査費を明示してください。
まとめ
- 解体・改修は規模にかかわらず、着工前に全ての材料の石綿事前調査が必要
- 建築物は令和5年10月以降、工作物は令和8年1月以降の着工から、有資格者による調査が必要
- 解体80平方メートル以上、改修・工作物は請負代金100万円以上で電子報告。分割契約は合算、元請がまとめて報告
- 記録は3年保存し、現場に掲示する
- 石綿の有無が確定するまで、撤去材を売却や金属くずに回さない
石綿なしが確認できた撤去材のうち、使える機器や金属は売れることがあります。GenbaLink 在庫マーケット で状態を示して出品できます。



