経営事項審査とは|P点の中身と、公共工事でどう使われるか

公共工事を発注者から直接請け負う場合、経営事項審査(経審)を受けていることが前提になります。民間工事だけなら不要ですが、公共に出るなら避けて通れません。
制度の詳細と申請の手順は許可行政庁の案内をご確認ください。ここでは点数の構造と、実務で動かせる部分を扱います。
経審は何をする手続きか
会社の経営規模、経営状況、技術力、社会性等を数値化する審査です。結果は総合評定値(P点)として通知され、発注者はこれを使って会社を格付けします。
流れはおおむね次のとおりです。
- 決算を確定させる
- 決算変更届を提出する
- 経営状況分析を登録分析機関に依頼する(Y点が出る)
- 許可行政庁に経営規模等評価を申請する
- 総合評定値(P点)の請求をする
- 結果通知書を受け取る
- 各発注者の入札参加資格審査に申請する
7番目まで行かないと入札には参加できません。 経審を受けただけでは終わりません。発注者ごとに受付期間が決まっているため、そこから逆算して段取りしてください。
P点の計算
総合評定値は、5つの評点を重み付けして合計します。
P = X1×0.25 + X2×0.15 + Y×0.20 + Z×0.25 + W×0.15
| 記号 | 内容 | ウェイト |
|---|---|---|
| X1 | 年間平均完成工事高 | 0.25 |
| X2 | 自己資本額・平均利益額 | 0.15 |
| Y | 経営状況(分析機関が算出) | 0.20 |
| Z | 技術力(技術職員数・元請完成工事高) | 0.25 |
| W | その他の審査項目(社会性等) | 0.15 |
X1とZで合わせて0.50です。 工事高と技術者が点数の半分を占める構造になっています。
有効期間の起点は決算日
ここを誤解している会社が多くあります。
- 有効期間は審査基準日(直前の決算日)から1年7か月
- 結果通知書の日付が起点ではない
- したがって、申請が遅れるほど使える期間が短くなる
決算日から結果通知までに4か月かかれば、残りは1年3か月です。空白期間を作らないためには、決算後すみやかに動くことが必要です。 空白ができると、その間は公共工事を直接請け負えません。
現実的に動かせる項目
短期で大きく動くのはWとZです。
- W点:社会保険の加入、建設業退職金共済制度への加入、法定外労災への加入、防災協定、CCUSの活用、若年技術者の育成など、加入や取り組みで積める項目が多い
- Z点:技術職員の資格取得。1級と2級で配点が違うため、受験の計画が点数に直結する
- X2点:自己資本の増強。増資や利益の内部留保で動く
- Y点:経営状況分析。負債の圧縮や利益率の改善で動くが、決算の内容そのもの
W点は「知っていれば積める」項目の集まりです。 加入していない制度がないか、毎年の申請前に一覧で確認してください。
年間のスケジュール
決算日を起点に、次のように動きます。
- 決算確定(審査基準日)
- 税務申告
- 決算変更届を許可行政庁に提出
- 経営状況分析を登録分析機関に申請(Y点が出る)
- 経営規模等評価・総合評定値を許可行政庁に申請
- 結果通知書の受領
- 各発注者の入札参加資格審査に申請
3番目と4番目は並行して進められます。 全体で2〜4か月かかることが多いため、決算後すぐに動き出す必要があります。
7番目の受付期間は発注者ごとに決まっています。 定期受付を逃すと、次の受付まで参加できない場合があります。自社が出たい発注者の受付時期を一覧にしておいてください。
W点で積める項目の例
W点は取り組みの有無で加点される項目が多く、知っていれば積めます。
- 健康保険・厚生年金・雇用保険への加入
- 建設業退職金共済制度への加入
- 退職一時金制度または企業年金制度の導入
- 法定外の労働災害補償制度への加入
- 防災協定の締結(単独または団体を通じて)
- 建設機械の保有状況
- 若年技術者・技能労働者の育成
- 建設キャリアアップシステムの活用状況
- ISO等の認証取得
加入しているのに申請書に書いていない、という取りこぼしが実際にあります。 申請前に一覧で突き合わせてください。
よくある質問
Q. 民間工事だけなら受けなくてよいか
公共工事を直接請け負わないのであれば必須ではありません。ただし元請の審査でP点の提示を求められることがあります。
Q. 毎年受ける必要があるか
有効期間が1年7か月なので、公共工事を継続して請けるなら毎年受けることになります。
Q. 業種ごとに点数が出るのか
完成工事高などは業種ごとに評価されます。入札で使う業種に工事高を寄せるかどうかは戦略の問題になります。
Q. 決算期を変えると経審に影響するか
審査基準日が変わるため、有効期間の起点も変わります。事業年度を変更する場合は、経審と入札参加資格審査のスケジュールへの影響を先に確認してください。
Q. 分析機関はどこを選べばよいか
国土交通大臣の登録を受けた経営状況分析機関であれば、どこでも結果は同じ基準で出ます。料金と処理期間、電子申請への対応で選ぶのが実務的です。
点数を上げる前に確かめること
点数対策の前に、そもそも自社がどの等級を目指すのかを決めてください。
- 出たい発注者はどこか(国、県、市町村)
- その発注者の等級区分と、必要なP点の目安
- 目指す等級で発注される工事の規模
- その規模を施工する体制が自社にあるか
等級が上がれば大きな工事に出られますが、施工できなければ意味がありません。 技術者と資金の体制に見合った等級を選ぶほうが、結果として受注は安定します。点数を上げること自体を目的にしないでください。
まとめ
- 公共工事を直接請け負うには経審+入札参加資格審査が必要
- P=X1×0.25+X2×0.15+Y×0.20+Z×0.25+W×0.15
- 有効期間は審査基準日(決算日)から1年7か月。申請が遅いほど短くなる
- 短期で積めるのはW点。加入漏れの確認を毎年の作業にする
技術者の配置そのものは監理技術者の要件で扱っています。




