建退共の元請・下請の役割|掛金の購入と充当、現場の手続き

建退共(建設業退職金共済制度)は、現場で働く人が会社を移っても退職金を通算できるよう、事業主が働いた日数に応じて掛金を納める国の制度です。公共工事では、元請が下請の分も含めて掛金(電子申請方式の退職金ポイント、または共済証紙)を購入し、下請の就労の報告に基づいて充当・交付するのが基本の流れになります。建退共の案内では、掛金は公共工事・民間工事を問わず、現場で就労した日の全てについて納付するものとされています。
この記事では、元請と下請(協力会社)のそれぞれが何をするのかを、契約時・施工中・完成時の順に整理します。制度の運営は独立行政法人勤労者退職金共済機構の建設業退職金共済事業本部が行っており、手続きの詳細は同機構の案内で確認してください。
制度の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | 建設業の現場で働く労働者(加入できる労働者の範囲は建退共の案内で確認) |
| 掛金を納める人 | 事業主 |
| 納める日 | 現場で就労した日。休日と欠勤日は納付できない。有給休暇や事業主の都合による休業日は対象 |
| 納め方 | 電子申請方式(退職金ポイント)か、証紙貼付方式(共済証紙を共済手帳に貼る) |
| 税の扱い | 法人は損金(法人税法施行令第135条第1号)、個人は必要経費として全額算入できる |
掛金の日額は建退共の公表している額を確認してください。 この記事では、改定がありうる金額は挙げません。
1日の数え方の決まり
同じ事業主のもとで1日の労働時間が8時間を超えた場合は、超えた分を8時間単位で1日分として加算します。深夜作業で翌日に4時間以上及ぶ場合は、8時間に満たなくても1日分を加算します。同じ日に複数の事業主に雇われていた人は、それぞれの事業主が納付します。
元請がやること(公共工事の場合)
建退共の「元請としてやること」の案内を、時期ごとに整理すると次のとおりです。
契約の締結時
- 全ての下請に「建設業退職金共済制度加入労働者数報告書」の提出を求め、下請の被共済者(加入している労働者)の数を把握する
- 対象の労働者数と延べ就労日数から、必要な購入額を出す(的確に把握できない場合は、建退共の示す「掛金納付の考え方」の表を使う。発注者が独自の購入率を設けている場合があるので事前に確認する)
- 退職金ポイント、または共済証紙を購入する
- 掛金収納書を発注者に提出する(電子申請方式は工事契約の締結から40日以内、証紙貼付方式は1か月以内)
施工中
- 現場の見やすい場所に、建退共の現場標識を掲示する
- 毎月、下請から就労状況の報告を受ける
- 電子申請方式なら、下請の報告と自社分を合わせて電子申請専用サイトから建退共に報告する
- 証紙貼付方式なら、下請の報告に基づいて少なくとも月1回は共済証紙を下請に交付する
完成時
- 掛金を納めた日数と、購入した日数を比べる。大きく下回る場合は就労の報告を確認し、不十分なら追加で納付する
- 就労状況の報告書などの関係書類を、工事の完成後1年間保存する(下請にも同様の保存を指導する)
- 「掛金充当実績総括表」を作成し、発注者に示す
元請がまとめて買うのは、公共工事では予定価格に建退共の掛金の経費が積算されているためです。 建退共の案内でも、元請が下請の被共済者の分を含めて購入するとされています。
下請(協力会社)がやること
下請の役割は、元請が正しく充当・交付できるように自社の加入労働者と就労日数を報告することです。
- 元請に加入労働者数を報告する(契約時)
- 毎月、就労状況を元請に報告する
- 証紙貼付方式なら、交付を受けた証紙を労働者の共済手帳に貼り、消印する
- 関係書類を保存する
報告が遅れたり漏れたりすると、現場で働いた日の掛金が労働者に届きません。 再下請がいる場合は、その会社の分も取りまとめて報告します。具体的な手続きは建退共の「下請としてやること」の案内を確認してください。
民間工事ではどうするか
建退共の案内では、掛金は公共工事・民間工事を問わず、現場で就労した日の全てについて納付するものとされています。民間工事では、掛金の購入や交付の分担を元請と下請で決めておく必要があります。
- 下請契約の段階で、建退共の掛金を誰が負担し、どう充当するかを決める
- 見積書に建退共の掛金を含めるかどうかを明確にする
決めないまま工事が進むと、誰も納めていない日が生まれます。 見積書で法定福利費などを明示する考え方は職人単価の決め方で扱っています。
経理の扱い
建退共の案内によれば、購入した退職金ポイントや共済証紙は次のように処理します。
| 方式 | 購入したとき | 充当・交付したとき |
|---|---|---|
| 電子申請方式 | 資産勘定(「前払い掛金」等)に計上 | 「退職金共済掛金」として損金・必要経費に |
| 証紙貼付方式 | 資産勘定(「材料貯蔵品」)に計上 | 共済手帳への貼付・下請への交付のつど損金・必要経費に |
ただし、ポイントを充当しない、証紙を貼らない、下請に交付しない場合は、損金・必要経費と認められません。 元請が負担した下請の掛金も工事原価に算入できるとされています。
協力会社を選ぶときの見方
建退共に加入しているかどうかは、協力会社の労働者の処遇を見る手がかりの1つです。作業員名簿の社会保険の欄とあわせて確認すると、処遇への取り組みが見えます。名簿の書き方は作業員名簿の書き方、CCUSとの関係はCCUSの実務で扱っています。
よくある質問
Q. 下請が加入していない場合は
加入を促してください。加入の手続きは建退共の案内で確認できます。
Q. 一人親方は対象か
一人親方の扱いは、建退共の「一人親方(任意組合)について」の案内で確認してください。
Q. 購入した証紙が余ったら
完成時に購入日数と納付日数を照合し、建退共の案内に沿って処理してください。
まとめ
- 建退共は、事業主が就労日数に応じて掛金を納める国の制度。公共・民間を問わず就労日の全てが対象
- 公共工事では、元請が下請の分も含めてポイント・証紙を購入し、就労報告に基づいて充当・交付する
- 掛金収納書は電子申請方式で40日以内、証紙方式で1か月以内に発注者へ。書類は完成後1年保存
- 下請は加入労働者数と毎月の就労状況を元請に報告する
- 民間工事は、掛金の負担と充当の分担を契約時に決めておく
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