基本契約書と個別契約の使い分け|どちらに何を書くか

同じ協力業者と年に何件も取引するなら、毎回すべての条件を書いた契約書を交わすのは非効率です。共通する条件を1回だけ結び、工事ごとの条件だけを個別に決める。これが基本契約と個別契約の分け方です。この記事では、どちらに何を書くかを整理します。
なお契約の具体的な内容については専門家にご確認ください。ここでは切り分けの考え方を扱います。
分け方の原則
| 基本契約書 | 個別契約(注文書・請書) | |
|---|---|---|
| 性格 | 相手との関係のルール | この工事の条件 |
| 頻度 | 1回(期間で更新) | 工事ごと |
| 変わるか | あまり変わらない | 毎回変わる |
「相手が変わらない限り変わらないもの」が基本契約、「工事ごとに変わるもの」が個別契約と考えると迷いません。
基本契約書に書くこと
- 適用範囲(この契約が及ぶ取引の範囲)
- 個別契約の成立方法(注文書と請書による旨)
- 支払条件(締日、支払日、支払方法)
- 検査と引渡しの方法
- 契約不適合責任の期間と範囲
- 遅延した場合の扱い
- 第三者への損害の負担
- 秘密保持
- 再委託の可否と条件
- 反社会的勢力の排除
- 契約期間と更新
- 解除の条件
- 紛争の解決方法
- 準拠する約款
支払条件を基本契約に入れておくと、工事ごとに交渉しなくて済みます。 ここが基本契約の実務上の最大の利点です。
個別契約に書くこと
- 工事名、工事場所
- 工事の内容と範囲
- 請負代金の額
- 着手と完成の時期
- 支給材料、貸与機械の有無
- その工事固有の条件
「工事の内容と範囲」だけは毎回きちんと書いてください。 ここを省くと、基本契約があっても範囲で揉めます。
契約期間と更新
基本契約には期間を設けるのが一般的です。
- 1年契約+自動更新が多い
- 自動更新の条件(申出がなければ更新、など)を明記する
- 更新のタイミングで条件を見直す(支払条件、単価の考え方)
自動更新にしていると、何年も見直されないまま続くことがあります。 年1回、更新月に条件を確認する運用にしてください。
条件を改定するとき
支払条件や単価の考え方を変えるときは、基本契約の変更になります。
- 変更する内容を整理する
- 相手に事前に説明する(一方的な通知にしない)
- 覚書または変更契約を交わす
- 適用開始時期を明確にする(既に進行中の工事はどうするか)
4番目が抜けると、進行中の工事の扱いで揉めます。 「◯月◯日以降に発注する工事から適用」のように書いてください。
締結の順序
新しい協力業者と取引を始めるときの順序です。
- 相手の適格性を確認する(建設業許可、保険、体制)
- 基本契約書を交わす
- 必要な書類を受け取る(許可証の写し、保険証券の写しなど)
- 個別の注文書を出す
- 請書を回収する
- 着工
1番目を飛ばして契約を交わすと、後で工事を任せられないことが分かる場合があります。 確認項目は関連記事「協力業者の探し方」で扱っています。
保管と参照
- 基本契約書は相手ごとに1か所にまとめる
- 有効期限を一覧で管理する(自動更新でも把握しておく)
- 個別契約は現場ごとにまとめる
- 変更の覚書は基本契約と一緒に綴じる
覚書だけ別の場所にあると、何が現行の条件か分からなくなります。
基本契約がないとどうなるか
毎回、支払条件から検査の方法まで個別に決めることになります。実務上は次が起きます。
- 注文書に書ききれず、条件が曖昧なまま進む
- 現場担当ごとに条件が違う
- 揉めたときに、どの条件が適用されるか分からない
「いつもの条件で」が何を指すのか、書面がないと誰も答えられません。
更新時に見直す項目
自動更新にしていても、年1回は次を確認してください。
- 支払条件(法令の改正、実務の変化に合っているか)
- 単価の考え方(資材と労務の変動を反映しているか)
- 許可証の有効期限(更新されているか)
- 保険の加入状況(労災、賠償責任)
- 取引実績(実際に発注しているか。していない相手は整理する)
最後の項目が意外に効きます。 何年も発注していない相手の基本契約が残ったままだと、一覧が実態と合わなくなります。
相手が複数の立場になる場合
同じ会社と、元請と下請の両方の関係になることがあります。
- 契約を分けて管理する(どちらの立場かが分かるように)
- 相殺の扱いを決めておく(支払と入金がある場合)
- 担当を明確にする
「同じ会社なのでまとめて」とすると、どの契約が適用されるか分からなくなります。 立場ごとに分けてください。
よくある質問
Q. 単発の相手にも基本契約は要るか A. 単発なら注文書に約款を添付する方法があります。継続する見込みが立ってから基本契約にする形で構いません。
Q. 相手の書式と自社の書式のどちらを使うか A. どちらでも構いませんが、内容を確認してください。相手の書式をそのまま使う場合は、自社に不利な条項がないか見る必要があります。
Q. 基本契約に単価表を付けてよいか A. 付けられます。ただし単価は変動しやすいので、改定の方法を書いておいてください。
Q. 何年契約にすべきか A. 1年で自動更新とし、更新月に条件を見直す運用が実務的です。
Q. 基本契約を結んだ相手に発注しない年があってもよいか A. 問題ありません。ただし何年も発注がない相手は、更新時に整理するか、条件を再確認してください。
Q. 途中で条件を変えたい A. 覚書または変更契約を交わし、適用開始時期を明記してください。進行中の工事の扱いも書いてください。
まとめ
基本契約には「相手が変わらない限り変わらないもの」(支払条件、検査、責任、期間、解除、紛争解決)を、個別契約には「工事ごとに変わるもの」(工事名、内容と範囲、金額、工期)を書きます。支払条件を基本契約に入れておくと、工事ごとの交渉が不要になります。自動更新にしていると何年も見直されないので、更新月に条件を確認する運用にしてください。条件を改定するときは、適用開始時期を明確にすることが揉めない要点です。
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