建設工事の契約書と印紙|金額の考え方と、電子契約で不要になる理由

契約書を交わすたびに印紙を貼る作業は、件数が多い会社では相応の手間と費用になります。一方で、電子契約にすれば印紙は不要です。この記事では課税の範囲と金額の考え方を押さえたうえで、実務でどう扱うかを整理します。
なお税額と軽減措置の内容は改正されることがあります。実際の税額は国税庁の最新の案内で確認してください。 ここでは考え方を扱います。
何に課税されるか
建設工事の請負契約書は、印紙税法上の課税文書にあたります。
- 請負契約書(工事請負契約書、工事注文請書など)
- 契約の内容を変更する文書(変更契約書、覚書のうち一定のもの)
- 注文請書(請負契約の成立を証明するもの)
一方、次は一般に課税文書に当たらないとされます。
- 注文書のみ(申込みであって契約の成立を証明しない場合)
- 見積書
- 電子データで作成・交付した契約書
注文書と請書のうち、課税されるのは通常「請書」の側です。 発注側ではなく受注側が印紙を負担する形になりがちなのはこのためです。
金額の考え方
印紙税額は契約金額の区分で決まります。実務で迷いやすいのは次の点です。
| 場面 | 考え方 |
|---|---|
| 消費税の扱い | 契約書に消費税額が明確に区分されていれば、その額を含めない扱いができる |
| 変更契約 | 増額分に対して課税されるなど、扱いが定められている |
| 金額の記載がない | 記載金額のないものとしての扱いになる |
| 複数の工事を1通に | 合計額で判断される |
消費税額を区分して書くかどうかで税額が変わることがあります。 契約書の書き方の問題なので、様式を決めるときに検討する価値があります。
軽減措置
建設工事の請負に関する契約書には、一定期間、税率の軽減措置が設けられています。
- 対象と期間が定められている
- 期限は延長されることがある
適用期限は改正で動くため、契約書を作る時点で最新の案内を確認してください。 「以前の税額表で計算していた」という誤りが起きやすいところです。
誰が負担するか
印紙税は、課税文書の作成者が納める義務を負います。契約書を2通作って双方が1通ずつ保管する場合、それぞれが自分の保管する分の印紙を負担するのが一般的です。
- 1通だけ作って写しを渡す方法もある(写しは課税されない扱いになる場合がある)
- ただし写しでは相手の手元に原本がないことになる
「1通だけ作って割印した写しを渡す」運用は、印紙を節約できる一方、相手の立場が弱くなります。 双方の合意で決めてください。
貼り忘れ・消印忘れ
- 貼り忘れ: 過怠税の対象になります
- 消印忘れ: これも過怠税の対象になります
- 契約の効力: 印紙がなくても契約自体は有効です
「印紙がないと契約が無効」ではありません。 ただし税務上の問題は残ります。
電子契約なら不要
電子データで作成・交付した契約書は、印紙税法上の課税文書に当たらないという扱いです。したがって印紙が不要になります。
- 件数が多い会社では費用の削減が大きい
- 郵送の往復も不要になる
- 保管も楽になる
注意点
- 紙に出力して署名押印すると課税文書になりうる(電子で完結させる必要がある)
- 電子帳簿保存法の保存要件を満たす必要がある
- 相手が電子契約に対応している必要がある
「電子で送って、紙に印刷して押印して返す」では意味がありません。 電子のまま完結させる運用にしてください。
実務での進め方
- 自社の契約様式を確認する(何が課税文書か)
- 年間の件数と印紙代を概算する(電子化の判断材料)
- 消費税額の区分表示を検討する
- 電子契約の可否を相手ごとに確認する
- 電子化するなら保存要件を整える
2番目を計算すると、電子化の判断が早くなります。 件数が多い会社では、年間で相応の額になります。
貼り方と消印
紙の契約書に印紙を貼るときの実務です。
- 貼る位置(欄がなければ左上が一般的)
- 消印(印紙と文書にまたがるように押す。署名でも可)
- 押す人(作成者または代理人。誰でもよいとされる)
- 複数枚貼る場合(それぞれに消印が要る)
消印は「再利用できないようにする」ためのものです。 押し忘れると過怠税の対象になります。
過大に貼った場合
金額を間違えて多く貼ってしまった場合、還付の手続きがあります。
- 税務署に「印紙税過誤納確認申請書」を提出する
- 当該文書を提示する
- 確認を受けて還付を受ける
契約書を破棄せずに保管してください。 現物がないと確認を受けられません。
よくある質問
Q. 注文書には印紙が要るか A. 申込みであって契約の成立を証明しないものは、一般に課税されません。ただし記載内容によって扱いが変わることがあります。
Q. 覚書にも印紙が要るか A. 内容によります。契約金額を変更するものなどは課税対象になりえます。
Q. 消費税を区分すると本当に変わるのか A. 契約書に消費税額が明確に区分して記載されている場合の扱いが定められています。詳細は国税庁の案内で確認してください。
Q. 電子契約に相手が対応していない A. その相手とは紙で運用することになります。混在すること自体は問題ありません。
Q. 契約書を2通作らず1通にできるか A. 1通を作成して写しを相手に渡す方法があります。ただし相手の手元に原本がない形になるため、双方の合意が必要です。
Q. 電子契約に切り替えるとき何から始めるか A. 年間の件数と印紙代を概算し、相手ごとの対応可否を確認してください。保存要件の整備も必要です。
まとめ
建設工事の請負契約書と注文請書は印紙税の課税文書にあたり、契約金額の区分で税額が決まります。消費税額を区分して記載するかどうかで税額が変わることがあるため、様式を決める段階で検討する価値があります。軽減措置は期限が延長されることがあるので、契約書を作る時点で最新の案内を確認してください。電子契約であれば印紙は不要になりますが、電子のまま完結させることと保存要件を満たすことが前提です。
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