下請に求める保険|請負賠償・労災上乗せの確認のしかた

元請が協力会社に保険の加入を求めるときは、「何の事故の、誰の損害を、どの保険で埋めるか」を分けて考えると、確認すべき書類がはっきりします。現場で働く人のけがは労災保険が基本で、建設工事の労災保険は元請が工事全体の事業主としてまとめて加入する仕組みです(労働保険の保険料の徴収等に関する法律第8条)。一方、第三者にけがをさせた、物を壊したといった損害は労災保険では埋まらないため、請負業者賠償責任保険などで備えます。労災保険の給付を上回る補償に備えるのが、いわゆる労災上乗せ保険です。
この記事では、元請が協力会社に求める保険の種類と、確認のしかたを整理します。どの保険にいくらで入るべきかは会社の事情によるので、具体的な補償内容は保険会社や代理店に確認してください。
事故の種類と保険の対応
| 事故の例 | 誰の損害か | 主に備える保険 |
|---|---|---|
| 協力会社の作業員が現場でけがをした | 作業員本人 | 労災保険(元請の現場の保険)、労災上乗せ保険 |
| 通行人に資材が当たった | 第三者 | 請負業者賠償責任保険 |
| 隣の建物を傷つけた | 第三者の財産 | 請負業者賠償責任保険 |
| 引き渡した設備の不具合で事故が起きた | 第三者・発注者 | 生産物賠償責任保険(PL保険)など |
| 工事中の建物や資材が火災・盗難にあった | 工事の目的物 | 工事保険(建設工事保険など) |
協力会社に求めるのは、主に2段目と3段目の賠償責任の保険です。 労災保険は元請の現場の保険で扱う部分が大きいため、求め方が違います。
労災保険の仕組み
建設の事業が数次の請負で行われる場合、労働保険徴収法では、その事業を1つの事業とみなし、元請負人のみを事業主とするとされています(同法第8条第1項)。そのため、現場で働く下請の労働者のけがは、原則として元請の現場の労災保険で扱われます。
ただし、次の点に注意してください。
- 事業主や一人親方は「労働者」ではないため、元請の現場の労災保険の対象にならない。労災保険の特別加入をしているかを確認する
- 元請と下請が申請し、厚生労働大臣の認可を受けた場合は、下請を元請とみなす扱いもある(同条第2項)
一人親方の特別加入の確認は、現場に入る前に必ず行ってください。 実務は一人親方の労災保険特別加入で扱っています。
労災上乗せ保険とは
労災保険の給付は法律で決まった範囲で、会社が負う損害賠償の全額を埋めるものではありません。 重い災害で、会社が安全配慮義務の違反などを問われた場合、労災保険の給付を超える賠償を求められることがあります。この部分に備えるのが、民間の保険会社の労災上乗せ保険(法定外補償の保険)です。
元請が協力会社に求めるかどうかは、会社の方針で決めます。
- 元請自身が、下請の作業員も含めて上乗せ保険に入る方式
- 協力会社にそれぞれ加入を求める方式
どちらにするかを決めずに「入っていますか」と聞くと、求める範囲がずれます。
請負業者賠償責任保険
工事中に第三者にけがをさせた、物を壊した、といった損害を補償する保険です。協力会社に加入を求めることが多い保険です。
民法では、注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を原則として負わないとされています(民法第716条)。ただし注文や指図に過失があったときは別です。協力会社が起こした事故の賠償は、まず協力会社が負うのが原則なので、その支払い能力を保険で確かめておく意味があります。
確認する点は次のとおりです。
| 確認する点 | 理由 |
|---|---|
| 保険期間 | 工期中に切れないか |
| 補償の限度額 | 想定される事故の規模に足りるか |
| 対象の工事の範囲 | 自社が頼む工種が含まれるか |
| 免責金額 | 自己負担の額 |
| 補償されない事故 | 対象外の作業がないか |
確認のしかた
- 保険証券の写し、または加入を証明する書類を受け取る
- 保険期間・限度額・対象工事を確認する
- 更新の時期を管理する(年度で切れる保険が多い)
- 確認した日と内容を記録する
加入の確認は、取引開始時と、保険の更新時の年1回が目安です。 確認の記録は、協力会社の審査の書類と一緒に保管してください。審査全体の考え方は元請の下請審査で見られることで扱っています。
契約書に書くこと
保険の加入を条件にするなら、下請契約書に書いておきます。
- 加入を求める保険の種類
- 限度額の目安(会社の方針として)
- 加入を証明する書類の提出
- 保険が切れたときの連絡の義務
口頭で「入っておいて」と伝えるだけでは、事故のときに確認できません。 契約書の項目は下請契約書に必ず入れる項目を参照してください。
よくある質問
Q. 下請の作業員のけがは、下請の労災保険で扱うのではないか
建設の事業では、原則として元請の現場の労災保険で扱われます(労働保険徴収法第8条)。ただし事業主や一人親方は対象外なので、特別加入の確認が要ります。
Q. 協力会社が保険に入っていない場合は
加入を求め、加入までの間に頼む作業の範囲を限定するなどで対応します。入らない場合は、取引の条件を見直してください。
Q. 限度額はいくらにすべきか
工事の内容と事故の想定によります。保険会社や代理店に相談して、会社の方針として決めてください。
まとめ
- 事故の種類と、誰の損害かで保険を分けて考える
- 建設の労災保険は、原則として元請が工事全体の事業主として加入する。事業主・一人親方は特別加入を確認する
- 労災保険の給付を超える賠償に備えるのが労災上乗せ保険。元請が入るか協力会社に求めるかを決める
- 第三者への損害は請負業者賠償責任保険。期間・限度額・対象工事を証券で確認する
- 保険の条件は下請契約書に書き、年1回は確認する
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